Armは「IPベンダー脱却」を図るのか:チップレットを手掛ける米新興を買収(2/2 ページ)
Armが、チップレット技術を手掛けるスタートアップDreamBig Semiconductorを買収する。買収は2026年3月末までに完了する予定だ。最近、ArmはIPベンダーから、チップベンダーへと移行するのではないかと報じられていた。今回の買収は、それを裏付ける動きになるのだろうか。
Armの狙いは
Armは、急増するAI/データセンター需要を十分に活用すべく、チップレットやネットワーキングなどの分野で新たな取り組みを模索してきた。例えば、同社の「Chiplet System Architecture(CSA)」は、システムパーティションやチップレット接続に向けた一連の標準規格を提供し、この新しい半導体設計分野における断片化に対応している。
DreamBigの半導体製品は、オープン標準規格に基づいて構築されていて、物理的なシリコンとIPライセンスの両方をカバーしている。こうした点から、今回の買収について、「Armは、BroadcomやMarvell、NVIDIAなどの顧客企業に、ただ単にDreamBigの設計製品をライセンス供与しようとしているだけなのだろうか」という根本的な疑問が生じる。
ここで注記すべき重要な点は、DreamBigのAIネットワーキングチップが、BroadcomやMarvell、NVIDIAなどのAI半導体製品と重複しているということだ。そうなると「Armは、DreamBigの設計を完全なチップとして商用化することも検討しているのだろうか」という疑問が浮かんでくる。
Reutersは最近の報道の中で、ArmがプロセッサIPを専業とする設計メーカーから、特にデータセンターに向けた独自チップの販売へと移行する可能性について示唆している。それが本当なら、DreamBigのMercuryネットワーキングチップは、Armがこのような独自チップの開発/販売へと転換していく上での足掛かりになるのではないだろうか。
業界観測筋がこの可能性について熱心に検討している一方で、最近のArmとQualcommとの法廷闘争は、その根拠にさらに説得力を与えている。業界レポートによると、Armは、Facebookの親会社であるMeta Platformsへのデータセンター向けプロセッサの供給をめぐり、Qualcommとの間で争いを繰り広げているという。
DreamBigの経営陣
Sohail Syed氏は、パキスタンのシンド州カラチにあるNED工科大学工学部の卒業生で、2019年にDreamBigを共同設立した。同氏は以前に、Marvell Semiconductorでエンジニアリング部門担当シニアディレクターを務めた経歴を持つ。2015年にもう1つ別のスタートアップFIRQuestを設立したが、同社は2019年にCorigineによって買収されている。
DreamBigの経営陣の中でもう一人の重要人物となるのが、Steve Majors氏だ。同氏は「DreamBigのアクセラレーターは、次世代AIネットワーキングの基準を設定する」と確信している。かつてIntelでエンジニアリングディレクターを務めた経歴を持ち、現在はDreamBigのエンジニアリング部門担当シニアバイスプレジデントを務めている。
米国カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くDreamBigは、パキスタンのカラチとラホール、イスラマバードに200人超の設計エンジニアから成る人材プールを確保している。Armによる買収は、パキスタン国内の全体的なIC設計エコシステムの他、特に、DreamBigが主要な設計エンジニアリングの拠点を置くNED工科大学の「Tech Park」などにとっては、大きな後押しとなるだろう。
また、Armにとって今回の買収は、ソフトバンクグループが所有するIP巨大企業である同社が、AI中心の設計時代における次の動きをどのように進めていくのかということを示している。近日中にさらなる詳細が明らかになれば、Armが、現在AIによる勢いが増す中で今回の買収をどのように位置付けているのかが分かるようになるだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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