Synopsysの大量解雇は「AI設計時代」の序章なのか:Ansysとの合併で10%を削減(2/2 ページ)
Synopsysが、Ansysとの合併を進める最中に10%の人員削減を実施した背景には、設計のオートメーションとAI適用があるのだろうか。
AIを用いたEDAツールも要因なのか
大規模買収において人員削減が行われるのは避けられないことだが、業界観測筋の中には、このような規模の人員削減の要因の1つに、AIベースのEDAプラットフォームも含まれているのではないかとする見方もある。特に、Synopsysの2025年第3四半期の売上高が予測を下回ったのに対し、設計オートメーションの売上高は23%増加しているためだ。
SynopsysのようなEDAツールメーカーは、より高度なオートメーションに注力する方向へと移行していることから、必要とされるエンジニアの数が減少している。このようなAI主導のEDAプラットフォームは、強化学習や生成AI機能を利用することで、RTL生成やテストベンチ作成のようなタスクを自動化し、設計効率や生産性を再定義している。
その好例として挙げられる「Synopsys.ai Copilot」は、フォーマルアサーション生成やRTLコード生成などの分野において生成AI機能を採用し、設計/検証サイクル時間を数日間から数時間へと短縮している。さらに設計エンジニアは、ドキュメンテーション検索やスクリプト生成を、数時間ではなく数分間で実行することが可能だ。
このためSynopsysは、AI主導の生産性を実現しながら、「AIツールが人間のエンジニアを置き換える」といううわさの根拠を早期に示したといえる。しかし同時に、これは「AIが完全に人間の仕事を奪う」という最悪のシナリオではないようだ。一見したところ、設計エンジニアはAIプラットフォームとの連携を強めており、エンジニアが高いレベルの設計目的を設定し、AIが反復的な繰り返し作業を担っているように見える。
ハイブリッド設計時代の幕開け
EDAはかつて、堅牢な売上高を維持し、ほぼ独占状態にあったが、現在ではAI支援型の設計ツールセットによる混乱の最中に置かれている。Synopsysの大規模な人員削減は、オートメーションやAI支援型ツールセットによって推進される、半導体設計の新時代の到来を示す前触れなのかもしれない。
このため設計エンジニアは、半導体設計/検証の既存のハイエラルキーが確実に崩壊していく中で、「スキルのリブート」としても知られる「再発明」を模索することが求められている。ハイブリッドなセットアップに向けた準備を進めることで、AI支援開発環境において、半導体製品をより効率的かつ迅速に共同開発できるようにする必要がある。
さらに重要なのが、このようなAI主導型のEDAツールセットの影響が、半導体メーカーの目前まで徐々に浸透していくと、はるかに大規模な混乱状態が生じる可能性があるという点だ。このため設計エンジニアは、この新しい時代のAI主導型半導体設計にすぐにでも精通する必要がある。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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