中国の半導体製造、あと数年で自給自足達成の見込み:装置国産化は30年に52%
フランスの市場調査会社Yole Groupによると半導体の自国内製造能力を強化する中国は、最先端プロセスでは後れを取るものの、現在のペースなら2027〜2028年にも半導体製造面での自給自足を達成する見込みだという。
フランスの市場調査会社Yole Group(以下、Yole)は2025年11月、中国の半導体業界に関する最新レポートを発表した。Yoleによると半導体の自国内製造能力を強化する中国は、最先端プロセスでは後れを取るものの、現在のペースなら2027〜2028年にも半導体製造面での自給自足を達成する見込みだという。
米国との貿易対立が激化する中で中国は近年、ファウンドリーおよび組立/検査能力を強化している。この結果、2023年までに中国内の半導体製造装置需要が世界装置売り上げの30%超を占めるまでに拡大したといい、Yoleは「現在のペースでは、中国は最先端の製造プロセスでは後れを取るものの、2027〜2028年までに半導体製造の自給自足を達成する見込みだ」と説明している。なお、製造装置の国産化については「進展しているものの限定的」と説明。2030年に52%に達する可能性があるとしている。
急拡大する生産能力、デバイスの競争力とは隔たり
Yoleによると中国の半導体製造能力は、2024年には既に国内需要の112%に至っていて、2030年には約160%に達する可能性があるという。そして地域売上高に対するシェアも2024年は71%だったのが、2027〜2028年頃には100%を超え、その後2030年には110%超にまで成長するという予測を示している。
ただ、国内デバイスメーカーのシェア拡大という面では、その進捗は製造と比較し遅れているという。中国デバイスメーカーの売り上げでみると、2024年時点で国内需要比で35%、地域売上高比で22%にとどまっていて、2030年にはそれぞれ約70%と50%程度に改善する見込みだという。Yoleは「この差は生産能力と国際競争力の隔たりを浮き彫りにしている」と語っている。
Yoleによると、中国デバイスメーカーの売上高は、2024年の約415億米ドルから2030年まで年平均成長率(CAGR)約15.7%で成長し、約1000億米ドル規模になる見込みだという。世界市場におけるシェアは6.3%程度から約10%と、近年の欧州や日本と同水準になる見通しだ。
Yoleは「ファウンドリーでの製造の自給自足は2030年までに達成される見込みだが、デバイス収益は国内需要の半分程度しか賄えない。また、技術面では台湾/韓国に2〜3年後れを取っていて、トランジスタ密度が低い。現在は大型チップやチップクラスタリングといった設計選択でこれを補っている」と説明。そのうえで「長期的な競争力は極端紫外線(EUV)露光技術などの重要分野におけるブレークスルーにかかっている。現時点では中国のモデルは複製/最適化/スケーリングを重視している。独自のイノベーションが本格化するのは、おそらく2030年以降になるだろう」と述べている。
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