300mmウエハーの全面膜厚を5秒で一括測定、浜松ホトニクス:プロセスロス低減や歩留まり向上に
浜松ホトニクスが最大300mmウエハーの全面膜厚を5秒で一括測定できる膜厚計を新開発した。従来の課題を解決する新手法を採用したもので、半導体製造の生産性向上を実現できるとしている。
浜松ホトニクスは2025年12月1日、最大300mmウエハーの全面膜厚を5秒で一括測定できる「HyperGauge 面内膜厚計 C17319-11」を開発したと発表した。従来の課題を解決する新手法を採用したもので、半導体製造の生産性向上を実現できるとしている。同日に受注を開始した。価格は1式2000万円(税別)で、1年で10式、3年で100式、5年で500式の販売を目標としている。
従来手法の課題
半導体の製造工程では、チャンバー内のピン温度などの影響によって、ウエハー上の膜厚にばらつきが生じることがある。この膜厚の不均一性は製品品質に悪影響を及ぼすため、工程間で膜厚を均一化することが重要な課題となっている。
浜松ホトニクスによると、現在、膜厚の測定にはポイントセンサー方式の機器が広く採用されているが、この方式では1点での計測に限られるため測定に時間がかかり、生産性を維持しながら面内測定や面内分布を把握することが困難だったという。この課題に対して製造現場では、膜厚測定を行う回数を制限したり測定点数を減らしたりすることで、生産性と品質のバランスを取っているが、より生産性を高めるため、膜厚測定の効率化や正確な面内分布の把握が求められていた。
今回、浜松ホトニクスが開発したのは、高感度カメラを用い、2次元でウエハーの膜厚を測定する手法を採用した装置だ。
「面内膜厚分布をスナップショット」という新しいコンセプト
浜松ホトニクスが開発した新装置では、高感度カメラを用いた独自の波長検出技術「λ-Capture(ラムダキャプチャー)」によって、最大300mmのウエハーの全面膜厚をわずか5秒で一括測定できるという。ウエハーの膜厚測定と同時に、ウエハーマッピングも行うため、従来のポイントセンサー方式と比べ、測定箇所の選定や位置合わせが簡単でき、「圧倒的なスピードで膜厚分布を取得する」としている。また高分解能と高い測定再現性を兼ね備え、ベアウエハーはもちろん、パターンウエハーの検査にも対応できる精度を備えている。
また高分解能と高い測定再現性を兼ね備え、ベアウエハーはもちろん、パターンウエハーの検査にも対応可能で、「膜厚ムラのあるウエハーや極薄膜ウエハーの全面膜厚分布の観察、パターンウエハー上の構造評価など、ウエハー全面を対象とした幅広い用途に対応できる」と説明。半導体製造装置に導入することで、工程ごとの膜厚検査が容易になり、プロセスロスの低減や歩留まりの向上を実現。生産性と品質の両立を図ることができるとしている。
浜松ホトニクスによると、国内の大手半導体メーカー数社が既に同製品の評価を行っていて「『面内膜厚分布をスナップショット』という新しいコンセプトと装置性能について、非常に高い評価を得ている」としている。
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