「AIの障壁は演算能力ではなくコネクティビティ」 Marvellが力説:CXLの注目も高まる(2/2 ページ)
Marvell Technologyは同社のカンファレンスで「当社はエンドツーエンドのコネクティビティメーカーだ」と述べた。AIがさらなる発展を遂げるためには、演算能力だけでなく、コネクティビティの性能も向上させていく必要があると強調する。
Celestial AIを買収した背景
Marvellは2025年12月初めに、Celestial AIを約32億5000万米ドルで買収すると発表した。Celestial AIは、米国EE Timesが2025年に発表した「Silicon 100」レポートにも取り上げられた企業で、シリコンチップにフォトニクスを直接統合する同社の独自技術「Photonic Fabric」を適用し、AIコンピューティングプラットフォームを開発している。
Marvellはこの買収により、短距離光分野に向けてコネクティビティのポートフォリオを拡大できるようになる。同分野については、銅線が帯域幅やレイテンシ、消費電力、放熱などの面で限界に達しつつあることを受け、AIシステムにおける必要性がますます高まっている。Celestial AIのPhotonic Fabricチップレットは、電気部品と光部品を小型フォームファクターに集積し、XPUで直接コパッケージ化してスイッチをスケールアップすることが可能だ。
カリフォルニア州サンタクララに拠点を置くスタートアップCelestial AIの共同創設者であり、CEOを務めるDave Lazovsky氏は、Marvell Industry Analyst Dayにサプライズで登場し、ティア1のハイパースケーラーからデザインウィンを獲得したことを発表した。同氏は聴衆に向けて「ある大手ハイパースケーラーは、Celestial AIの光接続をAIプロセッサで採用している。これは、AI設計の内部で銅接続から光接続へと大きく移行していることを示す」と語った。
またLazovsky氏は、Marvellの経営陣たちが提唱する、コネクティビティを前提とした考え方に共感を示した。それは「AI時代は、データセンターアーキテクチャを根底から変えているが、主要なボトルネックになっているのは、計算能力ではなくコネクティビティだ」という考えである。「AIワークロードは、それをサポートするために設計されたデータセンターインフラを超える速さで進化している」(Lazovsky氏)
Lazovsky氏は「ハイパースケーラーが直面している主要な課題としては、帯域幅とレイテンシ、消費電力、コストが挙げられる」と主張する。AIデータセンターの接続ファブリックに必要なのは、200ナノ秒未満の接続レイテンシと、電力消費量を少なくとも4〜5分の1に削減することだ。Celestial AIのPhotonic Fabricは、チップレット当たり16テラビット/秒(Tbps)(片方向)または単一パッケージで64Tbps(双方向)のスイッチクラスの帯域幅を提供することにより、こうした要件に準拠すると続けた。
また同氏は、電気トレースから光接続への移行に加え、Celestial AIの光HBMプーリング技術についても、「大規模なトレーニングワークロードに必要なレイテンシバジェットを維持しながら、メモリをコンピュートから数十メートル離れたところまで拡張できる」と語っている。この機能により、ダイエッジのエリアを解放してHBM容量を追加しながら、ダイの中心部から光接続を実現できるようになる。
AIワークロードは、データセンターの全体的なインフラ構築を超える速さで進化しているが、その一方で、XPUなどの計算リソースはもはやチョークポイントではなくなっている。その代わりに、ハイパースケーラーは、帯域幅密度やレイテンシ、エネルギー効率といった設計領域の問題に苦戦している。Marvell Industry Analyst Dayで、帯域幅やレイテンシに対応するAIシステムコのネクティビティに焦点が当てられたのは、こうした背景があるからなのである。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
数時間で実装できるエッジAI 推論性能は「Jetson」に比べて10倍
エッジAI用ソリューションを手掛ける米新興のSiMa.ai(シーマドットエーアイ)が、日本市場への展開を本格化している。消費電力が同等の場合、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)の推論性能を10倍に高速化できることが特徴だ。
HDDはデータセンターで根強い需要、大容量化の手を緩めぬWD
Western Digital(WD)は都内で記者説明会を開催。データセンターではHDDが中心的な役割を果たしていると強調し、熱アシスト磁気記録(HAMR)などを適用して、さらなる大容量化を目指す。2027年には、HAMRベースの40TB(テラバイト)品を投入する計画だ。
高密度/低消費電力3D DRAMの実用化に前進 キオクシアが基盤技術を発表
キオクシアは、高密度/低消費電力の3次元(3D)DRAMの実用化に向けた基盤技術として、高積層可能な酸化物半導体(InGaZnO)チャネルトランジスタを発表した。これによってAIサーバやIoT製品など幅広い用途で低消費電力化が実現する可能性がある。
AI半導体市場は「群雄割拠」の時代へ
AIで使われる高性能コンピュータチップ市場を独占しているNVIDIA。最近は、AIの各方面でライバルが登場し、NVIDIAの地位に迫ろうとしている。
微細化前倒しや3層積層の強化……「市場で勝ち切る」ソニーの半導体戦略
イメージセンサー市場において「勝ち切る」と目標を掲げ、技術力強化と成長投資を進めるソニーセミコンダクタソリューションズ。今回、同社社長、指田慎二氏ら幹部らが市場の見通しや事業戦略などを語った。