MicronがPSMCの工場買収を画策? 中国CXMT躍進……メモリ業界の最新動向:AIブームが業界に与える影響
2025年にはAIが技術分野において大きな注目を集めたが、新年を迎え、本質的にAIブームとの関係が深い業界もその存在感を示しつつある。AIデータセンターで普及している広帯域メモリ(HBM)デバイスを手掛けるDRAMメーカーは、ファブの生産能力獲得に奔走していて、それが地政学的な緊張によってさらに困難な問題になってきている。
2025年にはAIが技術分野において大きな注目を集めたが、新年を迎え、本質的にAIブームとの関係が深い業界もその存在感を示しつつある。AIデータセンターで普及している広帯域メモリ(HBM)デバイスを手掛けるDRAMメーカーは、ファブの生産能力獲得に奔走していて、それが地政学的な緊張によってさらに困難な問題になってきている。
メモリ市場は2026年以降もひっ迫の見込み
Micron Technology(以下、Micron)のCEOであるSanjay Mehrotra氏は「メモリ市場では2026年以降もひっ迫が続くだろう。特に当社は2026年に、数社の主要顧客からの需要全体の約半分から3分の2ほどしか対応できない見込みだ」と述べる。MicronとSK hynixは、2026年向けのHBM在庫が既に完売してしまっていることも明かしている。
DRAMメーカーは、AIやデータセンターをはじめ、各種高密度アプリケーションなどの強力な需要に対応すべく、新たな生産能力を必死に確保しようとしているが、PCやスマートフォン、グラフィックスなどのコンシューマーデバイスはどうなのだろうか。半導体メモリ業界は現在、明らかに変動期にあり、2025年終盤の以下のような展開は、パラノイア(心配性)や変化の原因などを反映しているといえる。
最新のメディア報道は、MicronがPSMCの12インチ工場の買収を検討している可能性があるという以前からのうわさを裏付けている。この取引には、戦略的提携や技術協力が含まれる可能性がある。PSMCは、台湾に拠点を置くメモリチップ製造専業ファウンドリーだ。
PSMCは最近、台湾の苗栗県にTongluo(銅鑼)工場を完成させたところだ。メモリ製造プロセスを中核とする設計だという。また、MicronとSandiskはいずれも、自社工場の生産能力が限界に達したために、PSMCとの密接な協業を模索しているとするメディア報道もある。Micronをはじめとするメモリメーカー各社は、需要が増大しメモリ価格が上昇する中で、生産能力の拡大を模索している。
台湾の経済日報によると、MicronとPSMCは、3種類の協業モデルを検討している可能性があるという。1つ目は純粋なファブモデル、つまり、本格的な工場買収を基盤とするものだ。2つ目は、技術移管に加え、製造装置の再配置を伴うモデル。そして3つ目は、PSMCが製造するメモリウエハーの一部を自社販売用として保有するというモデルだ。
中国CXMTがメモリ業界の主流に躍り出る可能性
もう1つのメモリ関連のストーリーは、中国からだ。メモリ不足が半導体業界を揺るがしている中、DRAM分野の後発企業が、新たな道を切り開くことで注目を集め始めている。
中国最大のメモリチップメーカーCXMTは、上海で新規株式公開(IPO)を実施するための準備を進めている。ウエハー生産能力の拡大や、製造技術の強化、次世代DRAM/HBMデバイス開発への投資拡大などを目指し、約42億米ドルの資金を調達していきたい考えだという。こうした動きのタイミングは、決して偶然ではない。半導体業界は現在、AIシステム分野や、PC/スマートフォンなどのコンシューマー分野において、深刻なDRAM不足に直面しているからだ。
CXMTは、中国政府からの支援を受けて2016年に創設された企業で、世界DRAM市場ではSamsung Electronics(以下、Samsung)とSK hynix、Micronに続き第4位にランクインしている。市場調査会社Omdiaによると、CXMTは2025年第2四半期の世界DRAM市場シェア全体の4%を占めているという。さらに、中国の合肥(Hefei)に拠点を置く同社は、2025年に対前年比売上高を倍増させ、2026年には収益化を実現する見込みだとしている。
このDRAMメーカーは2026年に、メモリ業界の主流に躍り出る可能性がある。もしCXMTがDRAMの価格設定に影響を与えるようなことになれば、これまでの秩序を破壊する存在にもなり得る。しかし同社は、MicronとSamsung、SK hynixという3大ライバルと同様に、安価なDRAMをコンシューマー市場に大量に供給するのではなく、AIのような戦略的分野に注力していく可能性が高い。
CXMTは最近、Samsungのエンジニアが10nm DRAMプロセス技術の情報を中国メモリメーカーである同社に流したとする技術スパイ関連の報道でも知られている。韓国当局は、製造ノウハウの機密情報を手書き文書や暗号化通信ツールで漏えいした疑いで、Samsungのメモリ研究/設計部門のエンジニア10人を逮捕している。
その中には、元Samsungエンジニアが、約5年間にわたって10nm以下のDRAM技術について書き溜めたノートをCXMTに手渡したとする疑惑も含まれている。そのノートには、ガス流量比やリソグラフィフォトレジストの設定、リアクター圧力などをはじめ、600以上の最適化プロセスステップに関する情報が網羅されていたという。
以上が、メモリ技術分野における最新動向だ。DRAM業界にとっては、さまざまな展開が満載の一年になるという前兆といえるかもしれない。AIワークロードは引き続き、DRAMとその特殊バージョンであるHBMに大きな影響を及ぼし、既にそのハイプサイクル的な特徴で知られるメモリ業界に、極めて重要な転換点をもたらすだろう。
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