パワー半導体の電力損失を低減できる仕組みを解明:シリコン中の水素が自由電子を生成
三菱電機と東京科学大学、筑波大学および、Quemixは、シリコンに注入した水素が、自由電子を生成する仕組みを解明した。これによって、IGBTなどシリコンパワー半導体デバイスの電子濃度を高度に制御し構造設計や製造方法を最適化できれば、電力損失を低減することが可能になる。
ダイヤモンドなどの半導体材料にも適用できる可能性を示す
三菱電機と東京科学大学、筑波大学および、Quemixは2026年1月、シリコンに注入した水素が、自由電子を生成する仕組みを解明したと発表した。これによって、IGBTなどシリコンパワー半導体デバイスの電子濃度を高度に制御し構造設計や製造方法を最適化できれば、電力損失を低減することが可能になる。
IGBTなどでは電力変換の効率を高めるため、シリコンに水素イオンを注入して電子濃度を制御する技術が用いられている。ところが、その原理については解明されてこなかった。三菱電機と筑波大学はこれまで、シリコン中に形成された特定の欠陥(格子間シリコン対)が水素と結合することによって、複合欠陥が形成されることを発見してきた。ただ、その過程において自由電子が新たに生成される理由は明らかになっていなかった。
そこで今回は複合欠陥に着目。東京科学大学やQuemixが持つ第一原理計算技術を用いて、複合欠陥中で水素がどのような役割を果たしているかを詳細に調べた。この結果、欠陥のないシリコンは、水素が自由電子の生成に関与しない電子状態であった。
これに対し、水素の近くに複合欠陥があると、水素はシリコン原子をつなぐボンド間に入ることが可能になり、複合欠陥は自由電子を取り出せる電子状態に変化することが分かった。さらに、水素の電子が複合欠陥に移動し、複合欠陥から電子が放出されることで自由電子として機能することを明らかにした。
三菱電機は、研究成果で得られた知見を一部適用し、シリコンIGBTとダイオードを試作し、その特性を評価した。水素を用いた電子濃度制御技術を用いることでスイッチングを安定化させ、シリコン基板の厚みをこれまでよりも薄くした。この結果、電力損失は従来の1200V品に比べIGBTで10%、ダイオードで20%もそれぞれ低減できることを実証した。
今回のメカニズム解明に当たってはシリコンを用いたが、ダイヤモンドや窒化アルミニウムといった半導体材料でも機能するのか初期検討を行った。この結果、ダイヤモンドは炭素原子間のボンド間に水素を取り込むことで、エネルギーが低い安定した構造が発生。ペアとなる欠陥が存在すれば、今回と同様のメカニズムが機能する可能性があるとみている。
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