山手線車両に次世代VVVFインバーター装置、最新SiC搭載:従来比で体積60%減、重さは半減
東日本旅客鉄道(JR東日本)は、三菱電機が開発中の次世代車両駆動用インバーター装置(次世代VVVFインバーター装置)を山手線E235系電車に試験搭載し、制御状態やメンテナンス性などについて確認を行う。2026年2月ごろまで試験搭載し、得られた知見を次世代の車両設計・開発に活用していく。
従来装置に比べ体積を60%削減、質量はほぼ半減
東日本旅客鉄道(JR東日本)は2025年9月、三菱電機が開発中の次世代車両駆動用インバーター装置(次世代VVVFインバーター装置)を山手線E235系電車に試験搭載し、制御状態やメンテナンス性などについて確認を行うと発表した。2026年2月ごろまで試験搭載し、得られた知見を次世代の車両設計・開発に活用していく。
VVVFインバーター装置は、電車のモーターを効率よく動かすための装置。現行のE235系VVVFインバーター装置でもSiC(炭化ケイ素)素子を搭載しているが、次世代VVVFインバーター装置には最新のSiC素子を採用した。半導体チップの構造とパッケージ構造を最適化したことで、素子単体のスイッチングロスを約60%低減している。
スイッチングロスを大幅に低減したことで素子の発熱が抑えられ、素子を冷やすための冷却器を小さくできるという。さらに、実装する部品の配置を最適化するなどして、VVVFインバーター装置自体も、小型軽量化に成功した。従来装置に比べ体積を約60%削減し、質量もほぼ半減した。装置の小型軽量化によって、スライドレール方式の取り付けが可能となった。これにより、車両に取り付ける際の作業負荷を軽減でき、安全性も向上できるという。
JR東日本は、鉄道車両の省エネ化に取り組んでいる。このためには、車両自体の軽量化に加え、床下に搭載する機器の軽量化も重要となる。そこで今回、車両走行電力量の削減に向けて、次世代VVVFインバーター装置2台をE235系電車1編成に搭載し、その効果を評価することにした。
VVVFインバーター装置の小型化は、装備品の取り付けスペースを削減できるだけでなく、搭載場所の柔軟性も高まる。削減した空きスペースに車両をモニタリングできる装置を搭載すれば、車両故障の予防につながる。新たなサービス機器を搭載すれば、顧客へのサービスを向上させることができるとみている。
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