「究極の半導体」ダイヤモンドを社会へ 動態展示も実現の早大発新興:Power Diamond Systems 藤嶌辰也氏/宇田川昌和氏(3/3 ページ)
電力需要の増大でパワー半導体の性能向上の重要性が高まる中、次世代パワー半導体の研究開発が進んでいる。中でも優れた物性値を誇り、「究極の半導体材料」と称されるのがダイヤモンドだ。ダイヤモンド半導体の研究を進めるPower Diamond Systems(PDS) Co-Founder&CEOの藤嶌辰也氏、同社 事業連携統括 宇田川昌和氏に、ダイヤモンド半導体の社会実装に向けた同社の取り組みについて聞いた。
基板コストは「大きな問題ではない」 社会実装の鍵とは
――ダイヤモンド半導体の社会実装はいつごろになると見ていますか。また、そこに向けた課題はどのようなものですか。
藤嶌氏 ダイヤモンド半導体の本格的な社会実装は2030〜2040年代になるという見方が一般的で、PDSでも基本的にはそのように見ている。2020年代にターゲットアプリケーションを見定め、2030年代から徐々に量産に向けた技術開発が始まっていくだろう。かつてはシリコン(Si)への信頼が厚く、新しい材料に対しては懐疑的な風潮があった中、SiCやGaNはかなりの時間をかけて多くの製品に採用されるようになった。SiCやGaNの普及で「次世代半導体材料も社会実装しうるものだ」という認知が広がり、ダイヤモンドはSiCやGaNと比べてより短期間で社会実装できる可能性もある。
そのために今後重要になるのはエコシステムの形成だ。ダイヤモンド半導体の社会実装は私たちだけで実現できるものではなく、サプライチェーンを支えてくれる企業と連携し、足並みをそろえていく必要がある。技術面での課題は「何が課題か知っている」ということ自体がPDSの資産になるので詳細は明かせないが、課題はもちろん把握していて、解決に向けた取り組みも進めている。MOSFETを開発して実際に動作させているのもその一環だ。
――ダイヤモンドは基板コストの高さが普及の課題になるという見方もありますが、いかがですか。
藤嶌氏 SiCやGaNも初期はそうした議論があったようだが、現時点では基板価格は大きな問題ではないと考えている。性能面で圧倒的なバリューがあり、かつ市場があれば、コストを下げるための技術開発も進んでいくだろう。PDSのような企業がダイヤモンドのポテンシャルをきちんと見せていくことがコスト低減にもつながる。
「ユーザーが使いたい仕様」が出発点
――PDSとしての今後の展望を教えてください。
藤嶌氏 「どのような性能のデバイスを目指すか」という数字を示すのは簡単だが、本当に重要なのはそうしたことではなく、ユーザーが「ダイヤモンド半導体を使ってみたい」と思えるような仕様を一緒に議論していくことだ。それによって研究開発の優先順位も変わってくる。そのため、現在最も重視しているのはユーザーとなりうる企業との連携だ。そうした企業は現在SiやSiCのデバイスを使っていて、課題に感じていることがある。その上でダイヤモンドに何を期待するかを探り、それを実現するための開発を行う。
エレクトロニクス業界で放熱性への要求はよりタイトになってきていて、今後要求水準が緩むことはなかなかないだろう。そうした中で、他を圧倒する熱伝導率を有するダイヤモンドへの期待は大きい。日本で研究が重ねられてきた技術でもあるので、社会実装も日本がきっちり行えるように進めていきたい。
宇田川氏 現在もパワー半導体を用いるさまざまな企業と連携を進めているが、今後はさらに広げていく。ユーザーとなりうる企業はもちろん、それ以外のプレイヤーも含め、関心を持ってくれる企業とは広く議論していきたい。それによってダイヤモンド半導体の社会実装の実現可能性を高めていく考えだ。
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