半導体産業を下支え 台湾スタートアップの「3つの特徴」とは:台湾半導体「強さの源泉」を探る(1)(3/3 ページ)
半導体製造やEMS(電子機器受託製造サービス)などで大きな存在感を放つ台湾。台湾がなぜ、これほどまでにエレクトロニクス/ICT産業で強いのか――。本連載では強さの源泉を探る。
特徴2:必ずしもIPOを目指さない出口戦略
台湾スタートアップの戦略は必ずしもIPO(株式の市場公開)が主要な出口戦略ではない。むしろ、大手ベンダーとの連携を目指すスタートアップも少なくない。こうしたスタートアップは、グローバル市場での販売ネットワークを持っている台湾大手ベンダーに自分たちが開発した技術やソリューションを売り込み、グローバル市場にいち早くアプローチすることを主要な戦略と考えている。
キーワードはスマート化である。既に述べたさまざまな領域におけるスマート化の動きの中で、スタートアップの技術やソリューションを必要とする台湾大手ベンダーと、台湾大手ベンダーのグローバル市場におけるネットワークを活用したい台湾スタートアップと、それぞれの利害が一致し、相互に補完する形が出来上がってきた。
台湾大手ベンダーから見ると、スタートアップの技術やソリューションをいち早く自社に取り込むことで、スピーディな製品やソリューションの開発が可能になり、物流、医療、農業、教育といった新しい分野に進出するきっかけを作ることができる。これまで培ってきた製品開発や量産技術を新しい分野で生かせるわけだ。
これは、台湾大手ベンダーが目指す「多角的全方位戦略」である。自社のハードウェアを活用し、物流、医療、農業、教育といった新しい分野に挑戦することに加え、量産から付加価値の高い製品作りへの新しいアプローチでもある。
一方、スタートアップ側から見ると、台湾大手ベンダーが持っているグローバル市場での経験やネットワークは魅力的である。台湾大手ベンダーを通じてグローバル市場でのニーズを的確に把握し、自社が開発した技術やソリューションをいち早く製品化し、台湾大手ベンダーの販路に乗せてグローバル市場に製品を投入できる。
製品の量産を台湾大手ベンダーに任せられるというメリットもある。このように台湾大手ITベンダーとの協業によってグローバル市場を目指すことは、最短距離で市場にアプローチし、自社で開発した技術やソリューションをいち早く生かすことにつながるのだ。台湾スタートアップの視点で見るとこれは「相互補完戦略」であり、IPOを目指さない出口戦略が、選択肢の一つであることは納得がいく。
特徴3:ハードウェア+ソリューションに強み
台湾スタートアップの強みは、ハードウェアとの組み合わせでソリューションを提供するテック系にあると言っても過言ではない。ここでいうソリューション」は、クラウドのプラットフォームで課題解決を提案するものだ。
毎年6月に開催されるInnoVEXは、国内外から400を超えるスタートアップが集まる。さまざまなスマート化の領域で必要とされるセンサー、入力デバイス、通信デバイス、サーバ、サイネージやディスプレイ、セットトップボックス、サービスロボットなど、ハードウェアを中心としたコンセプトモデルの提案、製品のプロトタイプの展示が多く見られる。
また、テック系の中でも川上寄りの要素技術分野や製品開発、量産技術、素材といった領域も、実は台湾企業が強い領域だ。ハードウェア+ソリューションという出展のスタイルは、InnoVEXやCOMPUTEX TAIPEIでも同じである。
次の機会に詳細を述べたいが、COMPUTEX TAIPEIが「PCと周辺機器の展示会」というのは既に過去のもので、今では台湾大手ベンダーの出展製品の多くはハードウェア+ソリューションが主流になり、こうした領域でも台湾スタートアップの存在感を垣間見ることができる。
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