データセンター用CPUでも勢力伸ばすRISC-V:SiFiveが4億ドル調達(2/2 ページ)
組み込み機器でじわじわとシェアを伸ばしているRISC-V CPUは、データセンター市場でも成長が見込まれている。
データセンター市場でCPUへの注目度が再び高まる
SiFiveは、The Futurum GroupのCEO兼チーフアナリストであるDan Newman氏が「RISC-Vの重要性と、データセンターにおいてCPUへの関心が再び高まっている」と強調していた発言を引用している。Newman氏は「CPUは突如として、特にデータセンター向けアプリケーションの分野において、再びエキサイティングな存在になりつつある。SiFiveは、こうしたトレンドを早期に捉え、業界が進化していく中でそのメリットを享受する優れた位置付けにある。現在はレガシーアーキテクチャが主要勢力となっているが、大手半導体メーカーやハイパースケール企業は、データセンターにRISC-Vを取り入れるという未来を思い描き始めている。今回の4億米ドルの投資ラウンドは、HPCの主要な競合相手がRISC-Vへと変化しつつあるという、重要な転換点を示している。RISC-Vは、レガシーアーキテクチャに代わる柔軟かつ効率的な代替手段を提供し、グローバルエコシステムの力を引き出して新しいソリューションをけん引することができる」と述べている。
EE TimesはSiFiveに、データセンター需要をけん引している一部の顧客企業について質問した。ArmのCPUが、主にMetaとの共同開発によって主導されてきたという点を踏まえると、SiFiveにも同じように、ロードマップを駆動する大手顧客が存在するのではないかと考えたためだ。しかしSiFiveは、これまで常に数多くの顧客を確保してきたが、企業名については明かしていない。CEOのPatrick Little氏は、2022年に行ったインタビューで「当社のRISC-VプロセッサコアIP『Performance』と『Intelligence』ファミリーの採用は、予想を大幅に上回った。われわれが話をしたほぼ全ての顧客が『取締役会からプロセッサベースの多様化を命じられている』と話していた。当社は、以前はシンプルな組み込み設計に焦点を合わせていたかもしれないが、現在では顧客の要求の中心である、インテリジェントデザインをターゲットにする形へ変化しつつある」と述べた。
またLittle氏はこの時、SiFiveの売り上げ構成が、ほぼ全て組み込み製品に頼っていた状態から、高性能製品が主導する方向へと大きく変化している点についても指摘した。Kang氏は2026年4月、EE Timesへの書面による回答の中で「SiFiveは今回の一連の発表の中で、特定の顧客に関する詳細は明らかにしていない。しかし、未来の高性能CPU設計要件に関して複数のハイパースケーラーと協業していることについては述べることができる。こうした顧客は全て、他の性能分野でSiFiveのRISC-V IPを採用している既存顧客である。つまり、複数世代にわたり商業出荷を成功させてきたことで、この分野への進出を実現したということだ」と述べている。
Kang氏は「現時点では、既存のデータセンター向けソリューションの現在の実績や収益についてはコメントを差し控える。しかし、以前発表したデータセンター向け製品である『P870-D』と『XM』の両方が現在、あるデータセンター顧客の下でカスタマーシリコンに搭載されていることは開示しておきたい」と付け加えた。
ロードマップとIPO
SiFiveのシリーズFラウンド後の2022年のインタビューで、Little氏は「1年以内のIPO(新規株式公開)を目指している」と述べていた。そこで、製品ロードマップと出口戦略について質問したところ、Kang氏は「ロードマップについては、最高水準のデータセンター性能を目指しており、今回の投資が複数世代にわたる製品開発を加速させるためのものであること以外の詳細は開示を控えたい。これらは単なるCPU IPではない。電力管理やインターコネクト、セキュリティなどを含む完全なIPソリューションを顧客に提供するしていく計画だ」とコメントした。
Kang氏はさらに「短期的には、データセンターの事業機会はIPOに向けた準備を進める上で注力すべき刺激的なマイルストーンだが、現時点では、IPOの時期に関して新たに開示できることはない」と付け加えた。4億米ドルの資金調達ラウンドは、SiFiveにとって付加価値の高いデータセンター市場が成長と収益の面でどのように発展していくかを見極めるために、投資家が少なくともあと数年は静観する構えであることを明確に示している。
データセンターをターゲットとするもう1つの主要なRISC-Vプレイヤーに、2025年12月にQualcommに買収されたVentana Micro Systemsがある。買収の発表以降、Ventanaの「Veyron」プロセッサIPが最終的にどこに落ち着くのかについては限られた情報しかなかった。しかし、Ventanaは2024年末に、データセンターにおけるAIおよびドメイン固有のコンピューティングの需要に対応するために、2025年に「Veyron V2」の出荷を開始すると発表した。2022年当時、Ventanaの創業者でCEOを務めるBalaji Baktha氏はEE Timesに対し「Ventanaのソリューションに対する期待感は、特に中国や米国のハイパースケーラーの間で非常に強い。一方、欧州では、高性能コンピューティングにおけるRISC-Vチップレットに大きな関心が寄せられている」と語っていた。
RISC-Vに関する話題に加え、今週は他にも注目すべき発表が2つあった。1つはSemidynamicsから、もう1つはCodasipからのものだ。
大規模推論向けのメモリ中心型AIインフラを開発するSemidynamicsは、SK hynixからの戦略的投資を発表した。公式発表によると、この投資は「次世代AI推論の経済性を決定づけるのは、演算能力だけでなくメモリアーキテクチャであり、トークンごとのコストが重要な指標であるという共通の確信を反映したものである」という。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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