メモリも中国が猛追 YMTCは新工場建設:装置や材料も「地元」で調達(2/2 ページ)
中国のNAND型フラッシュメモリメーカーであるYMTC(Yangtze Memory Technologies Corp)が新工場を建設しているという。米国による厳しい対中規制が続く中、中国はメモリでも猛追している。
YMTCは「NAND市場の弱者」ではない
YMTCは、中国で初めて3D NANDフラッシュメモリチップの量産を実現したメーカーであり、今や、市場リーダーのキオクシアやMicron、Samsung、SK hynixとの差を急激に縮めつつある。YMTCは2025年に、520億米ドル規模の世界NANDフラッシュ市場において11.8%のシェアを獲得している。一方、市場リーダーSamsungのシェアは30.4%で、SK hynixが16%、キオクシアが15.9%、Micronが13.3%で後に続いている。
YMTCは2026年初頭、3D NANDチップ向けの新しいメモリチップ設計「Xtacking 4.0」を発表した。この設計では、ロジックアレイとメモリアレイに2つの独立したダイを採用している。これにより、YMTCとしては初の競争力のある主要な半導体、64層3D NANDフラッシュデバイスが誕生した。
Xtacking 4.0アーキテクチャは270層で動作するため、SK hynixの321層の4D NANDフラッシュやSamsungの286層の第9世代V-NANDには及ばない。Xtackingアーキテクチャでは、周辺回路とメモリセルの処理を別々のウエハーで行う。そのため、メモリビット密度はかなり高い。
ただし、YMTCのNANDフラッシュデバイスは主に、中国のスマートフォンやノートPC、サーバ企業に使用されており、これらの企業は国産チップを使用することで政府の補助金を受けていることに留意する必要がある。例えば、AcerやAdata、Lexar、Team Groupなどは、SSDやその他のストレージデバイスにYMTCのNANDフラッシュを採用している。
しかし、カナダの調査会社であるTechInsightsによると、YMTCは日本や韓国、米国の競合他社に対して10〜20%の価格優位性も提供しているという。台湾経済研究所の一部門であるTaiwan Industry Economics Servicesのチーフディレクター兼リサーチフェローを務めるArisa Liu氏は「多くの場合、中国メーカーは、同じ仕様の製品において15%以上の価格優位性を享受している。これは、価格に敏感な汎用サーバやコンシューマー市場にとって非常に魅力的である」と述べている。
さらに言えば、YMTCの技術的ノウハウとNANDフラッシュにおける急速な進歩は、中国が半導体の自給自足を追求していることの証である。品質やセキュリティに対する懸念から中国国外でのメモリ採用は依然として限定されている一方で、歩留まりの向上による価格優位性やより成熟したプロセスを提供することで、YMTCのような後進企業がゆくゆくは世界のメモリ市場における調達決定を変化させる可能性もある。
DRAMの生産能力も強化か
業界レポートによると、YMTCはフェーズ3の生産能力の約50%をNANDではなくDRAMに割り当てることを決定したとされている。また、AIアクセラレーターとともに広く使用されている広帯域メモリ(HBM)にDRAMを積層するためのシリコン貫通電極(TSV)ベースのパッケージング技術の開発に取り組んでいるという。
YMTCはLPDDRのサンプル提供を顧客向けに開始していて、年末までにフィードバックを得る予定だという報道もある。その結果によって、YMTCが新工場に割り当てるDRAMの生産能力が決定される可能性が高い。
注目すべきは、中国のもう一つの主要メモリチップメーカーであるCXMT(ChangXin Memory Technologies)が、AIデータセンター向けのハイエンドDRAM技術に既に目をつけている点だ。CXMTはDRAM生産能力の20%をHBM3に移行していて、2026年後半にはHBM3の量産認証取得を目指している。さらに、HBM3Eチップは2年以内に出荷開始される見込みだ。
米国の貿易制裁にもかかわらず、中国で2社のメモリチップメーカーが台頭したことは、世界的にメモリの供給不足が深刻化する中で、中国の半導体自給自足の取り組みにおける決定的な瞬間といえる。さらに重要なのは、中国のメモリチップメーカーが、製造装置や材料を地元企業(中国企業)から調達しながら、新工場を建設している点である。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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