中国SiCの進化「日本は追い付けないレベル」 競わず活用を:技術商社が日本企業に提言(2/2 ページ)
技術商社のマルエム商会が炭化ケイ素(SiC)ビジネスに本格参入する。同社が正規代理店を務める国内外メーカーのSiC関連製品や技術を組み合わせ、日本の顧客に提案するという。同社は記者会見を開催し、同社のSiCビジネスについて説明したほか、急速に進展している中国SiC業界の現状についても解説した。
中国は「見えざる手」ならぬ「見える手」で成長
なぜ中国のSiC産業は急速に成長したのか。背景にはトライアンドエラーを繰り返す風潮がある。中国式の市場経済は「多産多死」と表現される。SiCのように政府が注力する分野には政府の投資を目当てに多くの企業が参入するが、ほとんどの企業は生き残れない。横氏によると、中国の民間企業が設立されてから倒産するまでの「平均寿命」は約3.7年だという。しかし、その中からごく一部、大きく成功する企業が生まれる。横氏は「トライアンドエラーを繰り返さなければ進化は起こらない。日本はエラーを致命的なこととして、トライしないようになってしまったことで停滞している」と指摘する。
経済の体制も異なる。中国は国家資本主義で、政府が経済に強く介入する。横氏は「経済学者のアダム・スミスは市場経済のメカニズムについて『神の見えざる手』と表現したが、中国は政府が『見える手』を使っている。どちらが良い悪いというわけではないが、中国はサッカーで手を使っているようなもので、日本が競争しても勝ち目がない」と分析する。
さらに、働き方にも違いがあるという。横氏は「中国人はよく働く。平日は工場の寮に泊まり込み、週末だけ自宅に帰るスタッフが多い。日本人は『働かない改革』を行っているが、もともと同じ能力を持っているとしたらよく働く人と競争して勝つことはできない」とする。
日本企業も「中国企業の活用を」
横氏は、日本企業が中国企業との協業や取引をためらう中でも「Infineon TechnologiesやSTMicroelectronicsといった欧州のパワー半導体大手は、しっかり中国と協業している」と指摘。「日本企業も良いものはどんどん使って、自分たちの強みを伸ばしてほしい」と述べた。
西岡氏も「中国製SiCウエハーの品質などは、もはや日本が追い付けないレベルに来ている。価格や供給能力も高い。日本企業がこれを活用しない手はない」と強調。マルエム商会は強い情報ネットワークを生かして、ベストフィットソリューションを提案する「ベストフィットナビゲーター」としての貢献を目指すとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
SiC LSIの事業化に挑む 28年以降ADCのサンプル出荷へ
京都大学 工学研究科 准教授の金子光顕氏は、炭化ケイ素(SiC)を用いた高温動作LSIの研究開発と事業化に取り組んでいる。まずは高温環境向けのA-Dコンバーター(ADC)開発を進め、2028〜2029年ごろのサンプル出荷を目指す。SiC LSIの可能性や社会実装に向けた課題、事業化の展望について聞いた。
パワー半導体世界市場、2035年は7兆円超え 酸化ガリウムも一定規模に
富士経済は2026年4月、パワー半導体世界市場の予測を発表した。2030年ごろから次世代パワー半導体の実用本格化が進み、市場が大幅に拡大。2035年には、2025年比で95.7%増となる7兆3495億円になると予測する。
三菱電機、ローム・東芝との統合は「非常にポジティブ」
三菱電機は2026年4月15日、パワーデバイス製作所福岡地区(福岡市)に新工場棟「パワーデバイスA棟(PA棟)」を建設し、竣工式を行った。現地では同社半導体・パワーデバイス事業本部長の竹見政義氏が、ローム、東芝とのパワー半導体事業統合についても語った。
SiCウエハー世界市場は2035年に5724億円規模へ 中国メーカーが攻勢
富士経済によると、炭化ケイ素(SiC)ウエハーの世界市場は、2025年見込みの1943億円に対し、2035年は約3倍の5724億円規模になるという。今後は、中国を中心に8インチウエハーを用いたパワー半導体デバイスの製造が本格化する見通しだ。
「技術絶やさないで」 中国勢が躍進するSiC市場、日本の勝ち筋を探る
高耐熱/高耐圧用途向けでシリコン(Si)に代わる次世代パワー半導体材料として、炭化ケイ素(SiC)への注目度がますます高まっている。2025年9月に開催されたSiCに関する国際学会「International Conference on Silicon Carbide and Related Materials(ICSCRM) 2025」での動向などを踏まえて、SiC開発の現状や日本を含めた世界のプレイヤーの勢力図について、名古屋工業大学 電気・機械工学科 教授の加藤正史氏に聞いた。
