車載は「新たな成長段階に」 SiCパワー半導体市場、5年後110億ドル規模へ:Yoleの最新予測
フランスの市場調査会社Yole Group(以下、Yole)の最新予測によると、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイス市場は2025〜2031年まで年平均成長率(CAGR)20%で成長し、2031年には110億米ドルに達する見込みだという。800Vアーキテクチャ電気自動車(EV)の普及拡大などが成長をけん引する。
フランスの市場調査会社Yole Group(以下、Yole)の最新予測によると、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイス市場は2025〜2031年まで年平均成長率(CAGR)20%で成長し、2031年には110億米ドルに達する見込みだという。800Vアーキテクチャ電気自動車(EV)の普及拡大などが成長をけん引する。
31年には「世界EV出荷の半数が800Vアーキテクチャに」
Yoleが2026年6月15日、年次レポート「Power SiC 2026ーMarkets and Applications」(レポート発行は同年5月)をリリースしたと発表した。
市場予測をアプリケーション別でみると、電動車(xEV)向けが今後も市場の過半を占める見込みで、2025年の21億米ドルからCAGR 21%で成長し2031年には68億米ドル規模になると予測している。Yoleは「2024年と2025年にはEV需要が一時的に減速したものの、自動車市場は新たな成長段階に入りつつある」と説明。BEVは依然としてSiCの主要な成長エンジンであり、特に、SiC搭載量が多くなる800Vアーキテクチャ採用バッテリー電気自動車(BEV)の普及拡大がけん引役になると見ているという。同社は2031年までに800Vプラットフォームは世界EV出荷台数の約半数を占めると予測している。
2番目に大きいのが太陽光発電や電力貯蔵システム(ESS)向けで、2025年の8億米ドルからCAGR 18%で成長し23億米ドルになると予想。SiCの高効率かつ高信頼性という特徴が、再生可能エネルギーの系統連系や電力変換の高効率化に貢献するとしている。一方、風力発電向けではコストや信頼性とのトレードオフもあり、導入は比較的緩やかに進むと予測している。
AIデータセンターの電源アーキテクチャ進化が機会に
市場を支えるのは引き続き上記2分野となっているが、YoleはAIインフラの拡大もSiC市場にとって有望な成長機会になると指摘している。生成AIの普及に伴いデータセンターの消費電力は急増していて、高効率な電力変換技術への需要が高まっているためだ。PFC(力率改善回路)や電源システム向けは、2025年の3億米ドルからCAGR 17%で成長し、2031年には7億米ドルに拡大すると予測している。
背景にはAIデータセンターの電源アーキテクチャの変化がある。Yoleは、現在主流の48〜54Vラック給電から、三相HVDC(高電圧直流)を用いたサイドカー電源ラック、さらには800VDC/±400V級アーキテクチャへの移行が進むとしている。
200mm化が本格化、300mmに向けた開発も
技術面では、200mm(8インチ)ウエハーへの移行が加速している。WolfspeedやInfineon Technologies(以下、Infineon)、Boschは既に200mmでのデバイス製造を本格化していて、今後さらに多くのメーカーが追随する見込みだ。また、薄ウエハー化やレーザースライシングなどの製造技術も進展していて、歩留まり向上やコスト低減が進む見通しだという。また、300mm(12インチ)ウエハーに向けた初期段階の開発も始まっている。
デバイス技術では、トレンチ構造SiC MOSFETの採用が拡大する一方、プレーナー構造の性能向上も続いている。加えて、高耐圧用途を見据えたスーパージャンクション(SJ)SiC MOSFETの製品化も近づいていて、Infineonは2027年にも市場投入する計画だ。Yoleはまた、2026年にはWolfspeedやInventChip、Navitas Semiconductor、Coherentなどが10kV級デバイスの製品や試作品を発表するなど、高耐圧化競争も本格化している点も挙げている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
東芝が新SiCパワーモジュール技術、インバーター電力損失30%減
東芝デバイス&ストレージ(東芝D&S)は、データセンターの電源システムなどに搭載される高周波インバーター向け炭化ケイ素(SiC)パワーモジュール技術を開発した。高周波動作によりインバーターの総電力損失を約30%低減できることを確認した。
SiCパワー素子をPCBに埋め込んだ超薄型モジュール、東芝
東芝の欧州現地法人であるToshiba Electronics Europeは世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo & Conference 2026」(2026年6月9〜11日/ドイツ・ニュルンベルク)において炭化ケイ素(SiC)MOSFETをプリント基板(PCB)に埋め込んだパワーモジュールの試作品を初公開した。
Infineonがノーマリオフ対応SiC JFET、AIデータセンター向け
インフィニオン テクノロジーズは、AIデータセンターや産業用途に向け、ノーマリオフ対応品やパッケージオプションなど「CoolSiC JFET」の製品群を拡充すると発表した。新製品は2026年中にも量産を始める予定だ。
立体配線でSiCの体積/損失を半減 富士電機の新パッケージ技術
富士電機は2026年5月26日、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の小型化/低損失化を実現する立体配線構造を開発したと発表した。従来比で製品体積を約5割削減できたほか、モジュール内部回路配線のインダクタンスを約7割、スイッチング損失を約5割低減したという。
中国SiCの進化「日本は追い付けないレベル」 競わず活用を
技術商社のマルエム商会が炭化ケイ素(SiC)ビジネスに本格参入する。同社が正規代理店を務める国内外メーカーのSiC関連製品や技術を組み合わせ、日本の顧客に提案するという。同社は記者会見を開催し、同社のSiCビジネスについて説明したほか、急速に進展している中国SiC業界の現状についても解説した。
ボッシュ、第3世代SiCチップを開発 性能20%向上
ボッシュは、同社として第3世代となる炭化ケイ素(SiC)チップを開発し、サンプル出荷を始めた。従来品に比べ性能を20%向上させつつ、チップサイズの小型化を図った。製造能力も強化し、ドイツと米国の製造拠点で数十億ユーロを投資する。


