田中貴金属、水素社会実現へ「国内最大」燃料電池発電システム稼働:湘南工場の電力需要の34%を賄う(2/2 ページ)
田中貴金属グループは、田中貴金属工業湘南工場(神奈川県平塚市)で、燃料電池発電設備「TANAKA H2 Nexus」の稼働を開始した。発電能力は500kWで、「純水素型の定置用燃料電池発電設備としては国内最大」(田中貴金属グループ)だという。湘南工場の電力需要の34%を賄いながら、水素利活用の実証を進める。
2000kWまで拡張可能、高耐震性の建屋
TANAKA H2 Nexusの建屋は3階建てで、2階と3階に発電設備を設置できる。稼働開始時点での発電能力は500kWだが、最大2000kWまで拡張可能な設計だ。災害拠点相当の耐震性を備え、災害時の電力供給拠点としての活用も想定する。
TANAKA H2 Nexusの稼働は、大規模な需要創出によって、水素の貯蔵/運搬/利用を行うサプライチェーンの構築への貢献も目指すものだ。稼働に至るまでには、東芝に加えて、建設会社である五洋建設、水素関連事業を手掛ける岩谷産業/ミライト・ワン/鈴木商館、システムインテグレーターのNECネッツエスアイなど、多くの国内企業が携わった。田中貴金属工業 副社長の多田智之氏は「国内企業と一緒に日本で水素を盛り上げたい。今回水素を使う側に回ることで、ユーザー側の課題も把握しながら、水素技術の利点をアピールしていきたい」とした。
課題は水素調達と熱利用 海外拠点で導入の可能性も
田中貴金属グループはTANAKA H2 Nexusの今後の課題として、「水素の調達」「発電時に発生する熱の利用」を挙げる。純水素の調達はコストが高いほか、経路も限られる。また、現時点で用いる水素は製造過程でCO2を排出するものだ。田中貴金属グループは今後、水素調達のコスト削減や多様化、製造工程でもCO2を排出しないクリーン水素への切り替えを目指す。また、燃料電池による発電では熱が発生するが、有効利用のめどは立っていない。これについては研究機関などと連携し、活用方法を探るという。
こうした課題があることから現在、湘南工場や他の国内拠点でのさらなる燃料電池発電設備の導入の計画はない。一方で、海外では日本よりも安価に水素が調達できる拠点もあることから、海外拠点で導入する可能性があるという。多田氏は「まずはTANAKA H2 Nexusを使いながらメリットやデメリットを見極めていきたい」とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「われわれのDNAは製造業」 半導体用材料開発を加速する田中貴金属
田中貴金属グループは2025年7月31日、創業140年を記念した記者説明会を開催した。同社の売上高の7割を占める産業事業では、半導体用材料の開発やカーボンニュートラル実現への取り組みを強化する。【訂正あり】
低温で接合後に融点480℃に、田中貴金属独自のシート状接合材
田中貴金属グループの製造事業を展開する田中貴金属工業および田中電子工業は、ドイツ・ニュルンベルクで開催された世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe 2024」に出展。独自開発の低温で接合可能ながら高温耐熱性を持つ独自開発のシート状接合材である「AgSn TLPシート」などを展示していた。
塗って乾かすだけ、過酸化水素製造用光触媒シート
大阪大学は、可視光照射下で水と酸素から過酸化水素を生成するための直鎖高分子光触媒「poly23DHN」を開発したと発表した。太陽光エネルギーを利用し低コストで大規模に過酸化水素を製造することが可能となる。
熱電発電と光触媒による水素製造を1枚の膜で実現、東海大
東海大学の研究グループは、「光触媒による水素製造」と「熱電発電」の機能を、1つの膜の中で実現できる新たなエネルギーデバイスを開発した。
300℃で使用可能なパラジウム合金水素透過膜を開発
田中貴金属工業は、300℃という低温領域で使用できるパラジウム(Pd)合金水素透過膜を開発、サンプル出荷を始める。高純度の水素精製工程で、加熱用の設備を追加する必要がなくなり、設備コストの削減につながるとみている。
100℃前後でも透過性能が高いPd水素透過膜を開発、田中貴金属
田中貴金属工業は、100℃前後の低温領域で高い水素透過性能を示すパラジウム(Pd)水素透過膜「HPM-L111」を開発し、サンプル品の供給を始めた。水素センサーや燃料電池、真空装置の水素除去などの用途に向ける。
