時価総額45兆円に キオクシア復活劇を支えたNAND戦略:HBM競争の外側で商機をつかむ(2/2 ページ)
キオクシアが、AIデータセンター向けSSD市場で攻勢を強めている。AIの用途が学習から推論へ広がる中、大容量NANDへの需要は急拡大していて、同社は第10世代「BiCS FLASH」を武器に、メモリ市場での存在感を高めている。
第10世代NANDフラッシュの量産開始は2027年
キオクシアと同社の戦略的パートナーであるSandiskは、半導体関連の世界最大規模の国際学会「ISSCC 2025」(米国カリフォルニア州サンフランシスコ、2025年2月19日)において、第10世代の332層BiCS FLASH技術を初めて披露した。この3Dフラッシュメモリチップは、より優れた電力効率と伝送速度を実現することで、AIデータセンター向けの要求に応えることを狙う。
第10世代品は、218層を積層した第8世代の3D NANDフラッシュと比べ、データストレージ密度が59%、電力効率が30%向上したという。しかし、第10世代のサンプル品は機能評価向けに提供されるもので、量産品の仕様とは異なる可能性がある。キオクシアは2027年に、岩手県の北上工場でこの第10世代NANDフラッシュチップの量産を開始する予定だとしている。
復活劇の持続には課題も
AIが招いたメモリ危機によって、キオクシアの株価は2025年の1年間で7倍に上昇し、2026年6月3日時点で時価総額は45兆円を超え、一時はトヨタ自動車を上回った。苦境に陥っていた大手電機メーカーの東芝からスピンオフしたキオクシアは、今や日本最大の時価総額を誇る企業となっている。
これは、1980年代には世界半導体市場の約半分を占めながら、その後10%未満にまで低下した日本の半導体産業にとっても、大きな追い風となっている。しかし、キオクシアの逆転劇は、日本の半導体業界にとっては朗報である一方で、今もまだ「AIのゴールドラッシュは今後も続くのか」「キオクシアや同業他社が供給を拡大する中で、かつてない規模のメモリチップブームは持続可能なのか」という懸念は残る。
さらに、キオクシアは技術的優位性を確立しているものの、NANDフラッシュメモリ市場ではSamsungやSK hynixなどの韓国メモリ大手が依然として大きな市場シェアを握っていて、両社は追い上げの速さでも知られる。また、中国のメモリチップメーカーYMTC(Yangtze Memory Technologies Corp)やCXMT(ChangXin Memory Technologies)も、市場シェアはまだ小さいが急速な追い上げを見せている。
キオクシアの第10世代BiCS FLASHデバイスは、単なる段階的な仕様の向上ではなく、真の大容量化/高速化を実現するダイだ。これは、AIによって生じたフラッシュメモリ不足を緩和する上で、同社にとってまれな切り札となる。ただし、AIとフラッシュメモリという、いずれも競争の激しい技術の交差点に立つ以上、キオクシアは現状に満足している余裕はない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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