ノイズに強く、周波数を正確に推定する方法を開発 群馬大ら:観測区間を部分的に重ねて実現
群馬大学とタイ・ラジャマンガラ工科大学イサーン校による国際共同研究チームは、ノイズが多い環境でも短い時間で変化する周波数を、高精度に追跡できる周波数推定法「OS-ZFM」を開発した。
強度ノイズや背景ノイズの条件下で、推定誤差を大幅に低減
群馬大学大学院理工学府電子・機械類の藤井雄作教授と、タイ・ラジャマンガラ工科大学イサーン校のPhichai Youplao准教授、Nithiroth Pornsuwancharoen助教らによる国際共同研究チームは2026年8月、ノイズが多い環境でも短い時間で変化する周波数を、高精度に追跡できる周波数推定法「OS-ZFM」を開発したと発表した。
周波数を正確に推定する手法として、ゼロクロス法などがある。波形がゼロを横切る時刻から周波数を求めるため、計算がシンプルでリアルタイム処理に適している。藤井教授らは2009年に、複数のゼロクロス時刻を最小二乗法で直線近似する「ZFM」を提案した。従来のゼロクロス法(ZCM)に比べノイズに強いという特長がある。ところが、観測区間を長くすれば時間変化を平滑化し、短くすれば推定値のばらつきが増えるという課題があった。
新たに開発したOS-ZFMでは、観測区間を部分的に重ねることで、「ノイズ平均化に必要な観測長」と、「推定値を更新する時間間隔」を分離し、課題を解決した。具体的には、N周期分のゼロクロス時刻を用いて1つの周波数を推定する。その後に観察窓をNより小さいM周期だけ進めて推定を行う。こうすることで、隣接する観測窓が一部のデータを共有するため、長い観測区間によるノイズ平均化を維持しつつ、短い間隔で新しい推定値を得られるという。
研究チームは、強度ノイズと背景ノイズを加えたシミュレーションを行い、OS-ZFMの性能をZCMや従来のZFM、複数点最小二乗法(MPLS)、ヒルベルト位相法(HPME)と比べた。この結果、SNR10dB・同一の時間分解能では、背景ノイズ条件の加速度推定中央誤差値が0.197m/s2となり、従来ZFMに比べ約65%低下した。ZCMに比べると最大で90%も減った。強度ノイズ条件では0.032m/s2となり、ZFMに対し約64%低下した。
さらに、ゼロクロス時刻の誤差を統計モデル化し、観測区間Nの増加に対する推定周期の分散が、O(N-3)で減少することも分かった。衝撃運動の実験では滑らかで物理的に整合した加速度−変位軌跡が得られた。また、処理負荷が小さいため、動作周波数が100MHz程度のプロセッサを搭載した組み込み機器でも、リアルタイム処理が可能である。
今後は、急激な周波数変化に応じて観測長を自動調整する適応型OS-ZFMや、極低SNR・波形ひずみ・ゼロクロス欠落に強い検出法の開発に取り組む。
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