絶好調の半導体市場に迫る転換点 株式市場が先読みする「2つの懸念」:大山聡の業界スコープ(103)(2/2 ページ)
半導体市場が絶好調で推移する一方、関連株の値動きは激しさを増している。株式市場が警戒する、ハイパースケーラーの設備投資とメモリ価格高騰を巡る「2つの懸念」を整理する。
高騰するメモリ価格
2つ目は、メモリ単価の暴騰である。
図2および図3は、DRAMおよびNAND型フラッシュメモリの大口顧客向け製品単価の推移を示したものである。メモリは汎用性の高い製品なので、需給バランスの影響を受けやすい。余れば値下がりし、足りなければ値上がりするわけだが、2026年初からの値上がりは過去に例のない爆謄ぶりである。
DRAMもNANDフラッシュも、PC、スマホ、データセンターの3つが主要アプリケーションであるが、昨今はデータセンター向けの需要が急増している。データセンターでは、ハイパースケーラー各社が熾烈な設備投資合戦を繰り広げていることはすでに述べたが、この中にはDRAMおよびNANDフラッシュの「爆買い」も含まれている。年間30兆円規模の投資を行っているハイパースケーラーとしては、メモリ調達は「単価」よりも「数量」を優先することになる。メモリメーカー各社にとって非常に好ましいことだが、これではPCメーカーもスマホメーカーもたまったものではない。メモリ不足で調達できない、あるいは調達できても異常に高価なので、生産計画を見直さざるを得ないのだ。
調査会社IDCでは、年初は「PCもスマホも2026年は台数ベースで前年比5〜10%程度のマイナスになりそう」などと予測していたが、数カ月後には「いずれも12〜13%程度のマイナス」に下方修正された。メモリ価格の高騰が続けば、例えば「15%以上のマイナス」に下方修正されるかもしれない。それだけ、PCやスマホ市場からの需要は減退しているのである。データセンターからのメモリ需要が旺盛なのは良いが、この異常事態がまだ続くのか。異常事態が終焉を迎える前に(株を)売った方が良いのでは、という考え方が株式市場にはあるという。
なお、筆者は今年スマホを買い替えるつもりでいたが、もう少し我慢して現行機種を使い続けることにした。こんな状況下で買い替えても、割高なスマホをつかまされることは目に見えているからだ。筆者と同様の考えを持つ人は、決して少なくないだろう。
「潮目が変わる」のはいつか
半導体市場は「好調」どころか「絶好調」で推移している。特にメモリメーカー各社の決算内容は製品単価の爆謄に支えられて、「過去に例を見ない」ような実績となっている。株式市場も、2026年初以降は半導体関連銘柄に対して極めて好意的な反応を示していた。だがこのところ「これがいつまで続くのか」「潮目が変わるのはいつか」という懸念が混在するようになった。
「大山さんは2026年後半に潮目が変わる、と予測されてましたよね」とはあるメディアのコメントだが、残念ながらそうではない。筆者はメモリの需給バランスがこのままの状態で続くとは思えない、という意味で申し上げたのであって、株式市場の潮目のことを予測していたわけではないのだ。
開き直るわけではないが、今回のようなメモリ単価の爆謄を予測できた業界人はいないだろうし、この異常事態がいつまで続くのかを言い当てる業界人もいないような気がする。しかし、株式市場で懸念されていることは、決して的外れなことではなく、昨今のAIブームの陰に隠された課題を浮き彫りにしている、と見た方が良いだろう。ハイパースケーラー各社もメモリメーカー各社も、設備投資を競い合っているが、いつかどこかでピークを迎えよう。株式市場の方が半導体市場よりも反応が早い(早すぎる?)だけで、われわれ半導体業界人も参考にすべき着目点は少なくないと思う。
筆者プロフィール
大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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