中国に見る高効率な開発戦略 最新ジンバルカメラを分解:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(106)(1/3 ページ)
今回は2026年に発売された、DJI/Insta360の最新ジンバルカメラを分解する。今やジンバル、アクションカメラ市場で2強としてしのぎを削る両社の製品からは、中国が強化している「マルチマーケット戦略」が見えてくる。
アクションカメラ市場を上回る勢いで拡大するジンバルカメラ
今回は前回最後で告知した通り、2026年に発売されたジンバルカメラを報告する。ジンバルカメラ製品は、従来のアクションカメラ市場を上回る勢いで拡大を続けている。2026年に発売したジンバルカメラは、デュアルカメラ(ワイドカメラと望遠カメラの組み合わせ)を搭載した新フラグシップモデルが大きな話題となっている。
デュアルカメラ搭載のジンバルカメラは、アクションカメラのトップメーカーであるDJIとInsta360からそれぞれ発売されている。本連載の104回目「カメラでも存在感放つ中国 Insta360/DJIの全天ドローンを分解」でも、全天(360度)カメラ搭載のドローンとしてDJIの「Avata 360」とInsta360監修の「Antigravity A1」2製品を取り上げている。
これらはともに、ジンバルとデュアルカメラを組み合わせた全天空撮ドローンだ。2社はドローン、ジンバルカメラ、アクションカメラ、その他ワイヤレスマイクなど多くの製品をほぼ同時期に発売し、市場の2強としてしのぎを削っている状況だ。今回の報告ではInsta360の「Luna Ultra」やDJIの「Osmo Pocket 4」など、104回目と一部かぶってしまう内容もあるがご了承いただきたい(比較対象として取り上げる)
2万円の価格差の理由は? Insta360、DJI新カメラを分解
図1はInsta360のLuna Ultra、DJIのOsmo Pocket 4Pという、2026年6月に発売した2機種のデュアルカメラ搭載ジンバルの様子である。発売時期は同じだが、Luna Ultraは6月15日、Osmo Pocket4Pは6月29日の発売と、わずか2週間だがDJIが後発となっている。全天カメラ搭載のドローンでも、DJIは後発だった。ただし大きな出遅れというわけではなく、2社ともに同時期に開発を進めていたことは間違いない。
2機種の外観や基本機能はほぼ同じものだが、価格は2万円ほどの差(Luna Ultraが税込11万9800円、Osmo Pocket 4Pが税込9万9000円)が生じている。Luna Ultraはディスプレイユニット(コントロール機能付き)が脱着式となっており、分離して使えるという、Osmo Pocket 4Pにない機能が備わっている。ディスプレイユニットとジンバル本体はワイヤレス通信が可能で、分離した状態でも映像確認や操作ができる。そのためディスプレイユニット側にも通信チップやディスプレイ表示SoC(System on Chip)、コントロールマイコンなどが搭載されており、製品全体での搭載半導体チップ数は、Osmo Pocket 4Pに比べて1.3倍ほど多い。2万円の価格差は上記のような理由からも生じているようだ。
構造はほぼ同じ、それでも違う部分とは
表1はOsmo Pocket 4PとLuna Ultraの内部の基板、カメラの様子である。基板と電池はグリップ内に配置される。2機種とも構造や基板サイズ、カメラの構成もほぼ同じである。ワイドカメラはともに3700万画素のCMOSセンサーが採用され、ズームカメラが組み合わされている。OIS(Optical Image Stabilizer)構造は2社に大きな違いがあるが詳細は省略する(有償のテカナリエレポートでは比較を掲載している)
表2はOsmo Pocket 4PとLuna Ultraの内部の主要チップの様子である。Osmo Pocket 4Pは自社開発のカスタムプロセッサとLPDDR5を組み合わせ、画像処理を行っている。Luna UltraはQualcommのプロセッサ「QCS8625」と自社開発のカメラAIプロセッサ2基に、LPDDR5が組み合わせられている。メインの処理部を見ると、Osmo Pocket 4Pは2チップに対し、Luna Ultraは4チップと点数が倍。DRAM容量もOsmo Pocket 4Pが4GBなのに対し、Luna Ultraは8GBと倍になっている。2万円の価格差はこうした部分も理由となっているわけだ。
DJIはメインのプロセッサを自社開発とすることで、一般販売されるプロセッサの過剰機能を削減し、自社製品に必要な機能だけでシリコン化しているので効率が高い。Insta360が活用するQCS8625は、スマートフォンで多く使用された「Snapdragon 8 Gen3」のモデム機能を止めたプロセッサ、つまりスマホ用チップの流用モデルである。そのためジンバルカメラでは使わない機能も搭載されている。
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