時速350kmのレースで「水平」維持、ソニー スタビライザーLSI:1.5フレームの低遅延(3/3 ページ)
イメージセンサー大手ソニーセミコンダクタソリューションズが、約1.5フレームの低遅延で映像のブレや傾きを補正するスタビライザーLSIの市場開拓を進めている。MotoGPなどで採用が広がる同製品の詳細を担当者に聞いた。
Sony Picturesのテレビドラマ撮影でも
スポーツ以外では、テレビドラマなどの撮影への活用も検討されている。SSSはSony Pictures Televisionと連携し、スタビライザーカメラの実用可能性を検証するPoCを実施しているという。
PoCでは、俳優の衣装や装着型のプロップに小型カメラを組み込み、アクションや追跡シーンなどを撮影。俳優自身が動きながら撮影することで、通常のカメラでは難しいPoV(Point of View/主観視点)での映像を得られるといい、
SSSは「PoCでは、迫力のあるカメラアングルを実現できるだけでなく、テイク数の削減による撮影時間の短縮や、制作計画の柔軟性向上にもつながることが分かった」と説明。PoCに携わる、Sony Pictures EntertainmentのTechnology Development部門シニアバイスプレジデントで、高島芳和氏は「スポーツ向けの撮影でこれまでになかったユニークな映像が撮影できることが証明されている。俳優や乗り物など、移動する物体からの視点を撮影する手法として期待している」とコメントしている。
バイク、ドローン、人で異なる「揺れ」に対応
SSSは、カメラを搭載する対象に応じてスタビライザーのパラメーターを変更している。バイクでは路面やエンジンによる振動に加えて、コーナリング時に車体が大きく傾く。ドローンではプロペラによる振動や風の影響、人が持って走る場合には周期的な上下動が加わる。
コンシューマー向けのアクションカメラの場合、ユーザーが選べるスタビライズモードは限られるが、説明担当者は「われわれは顧客が使用する環境に合わせて最適なパラメーターを設定できる」と強調。顧客から「この振動を取り切れない」といったフィードバックを受けると、ファームウェアやパラメーターを変更。顧客と一緒にフィールドテストを行う場合もあるという。
CXD5254GGはスタビライズ以外の映像処理にも対応する。例えばスポーツ中継では、昼間とナイターで撮影環境が大きく異なるほか、スタジアムのLED照明などを撮影すると光が揺れて見える場合がある。こうした映像の補正においても、同社がプロフェッショナル向けカメラなどで培ってきた技術を活用しているという。
なお現行のカメラモジュールの最大出力はフルHD(1080p)で、SDIに対応する。コンシューマー向けカメラでは4K対応が一般的になっているが、放送用途ではカメラだけを4K化すれば済むわけではないのだという。中継では、カメラで撮影した映像を無線で送り、中継設備や制作設備などを経由して放送する。こうしたシステム全体が4Kに対応する必要があり、既存設備にはフルHDを前提としたものも多いのだ。ただ、顧客から4K対応を求める声は多いといい、SSSの担当者は「次の世代を検討することになれば、そこは必ず考えなければいけないだろう」と語っていた。
カメラモジュールで用途を示し、LSI単体も拡大へ
SSSが2024年8月にカメラモジュールの外販を始めた背景には、CXD5254GG自体の市場を広げる狙いもある。LSI単体では具体的な用途をイメージしにくいが、カメラモジュールとして実際の撮影例を示すことで、使い方を提案しやすくなったという。
「カメラモジュールを外販するようになって、『こういう使い方ができるのか』と知ってもらえるようになった。カメラモジュールを見てもらって、同じことを自社のカメラでやりたいのでLSIを使いたい、という話にもつなげたい」(SSS担当者)
CXD5254GG単体では、スポーツ中継以外にも、監視カメラや搬送ロボット、ロボットアーム、ベルトコンベヤー上の検査カメラなど幅広い用途が対象になる。例えば地震で監視カメラ自体が揺れた際に映像を安定させる、といった形だ。なお、LSI単体で提供する場合も、対応するSSS製のイメージセンサーとの組み合わせが基本になるとしている。
現状ではスポーツ中継での採用が先行しているが、テレビドラマ撮影でのPoCなど、カメラモジュールの外販後に新たな用途も出てきた。SSSはこうした採用事例を増やし、モジュールに加え、CXD5254GG単体での採用拡大にもつなげていく方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ついにイメージセンサー世界シェア5割、ソニーが迎える正念場
気になるSamsungの動き、TSMCとのJVで「勝負に出た」ソニー。
25年のイメージセンサー市場は過去最高、ソニーはシェア5割
フランスの市場調査会社Yole Groupによると、2025年のCMOSイメージセンサー市場は前年比9%増の253億米ドルに成長し、過去最高を更新した。企業別ではソニーが約50%のシェアを獲得した。また、地域別シェアは日本勢が51%で首位を維持したほか、中国勢が21%に拡大して17%の韓国勢を抜いて世界2位に浮上した。
ソニーとTSMC、イメージセンサー合弁会社に7470億円 熊本で29年量産
ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)とTSMCが、次世代イメージセンサーの開発/製造を担う合弁会社(JV)「Advanced Vision Semiconductor Manufacturing」の設立に関する確定契約を締結した。熊本県合志市を拠点とし、スマートフォン向けの新イメージセンサーの量産における開発および製造を担う。SSSが約4650億円、TSMCが約2820億円を拠出し、2029年に量産を開始する予定だ。
ソニー半導体は1Q過去最高益、スマホ市況停滞も主要顧客ら拡大
ソニーグループのイメージング&センシングソリューション(I&SS)分野の2026年度第1四半期(2026年4〜6月)業績は、売上高が前年同期比26%増の5127億円、営業利益が同125%増の1222億円となった。モバイル向けイメージセンサーの単価上昇や為替の好影響を背景に売り上げが増加。営業利益は第1四半期として過去最高を更新した。
三菱電機とソニー、AIビジョンセンサーで新会社設立へ
三菱電機とソニーセミコンダクタソリューションズは、製造業向けAIビジョンセンサーソリューションを開発する新会社を合弁で設立する。新会社の社名は「Advanced Vision Solutions」で、2026年10月より事業を始める予定。
ソニーが新画素構造「RB2×2 OCL」採用センサー 高解像度とAF性能を両立
ソニーセミコンダクタソリューションズが高解像度とオートフォーカス(AF)性能を両立する新たな画素構造「RB2×2 OCL」を採用したイメージセンサーを開発した。1/2型で有効約6400万画素のセンサーで、主にスマートフォンの望遠カメラ向けを想定。この構造を量産品に搭載するのは「業界初」(同社)という。今回、開発担当者らに話を聞いた。