半導体誘致で対照的な日韓、共通する「官」「民」のズレ:大山聡の業界スコープ(104)(3/3 ページ)
半導体工場の誘致を目指す韓国・光州のフォーラムに参加した。しかし、誘致対象のSamsung ElectronicsとSK Hynixの姿はなく、政府の熱意と企業の姿勢には隔たりがうかがえた。半導体産業を巡る状況は対照的な日韓だが、「官」と「民」の意思のズレは共通する。両国の事例から、企業の実態と意思を踏まえた半導体戦略の必要性を考える。
「官」はもっと「民」に寄り添う必要がある
筆者は「キオクシアにDRAM事業に参入してもらうか」と述べたが、「それなりにあり得る」選択肢だと思っている。同社にはDRAM事業経験者が多く残っており、決して「未知の世界」ではない。ただ、同社独自の経営判断だけで「DRAM事業を始めよう」とはならないだろう。これには大きなリスクと負担を伴うことになる。こういう時に必要なのが政府のサポートである。
高市政権は、国内半導体製造について「2030年に15兆円、2040年に40兆円」などと目標金額の数字だけ並べているが、とても戦略を伴った内容とは思えない。そもそもなぜ日本の半導体産業が衰退したのか、どうすれば15兆円とか40兆円という数字を実現できるのか。これを実現できるかどうかは民間企業の活力次第なのだ。もっと民間企業の実態を理解してくれないと、このような目標だけ立てても意味がない。このままでは「官」と「民」の意識のズレは広がる一方である。
例えば、キオクシアがDRAM事業を立ち上げるために政府はどのような支援ができるのか。それが無理なら、韓国大手2社のいずれかに日本でDRAMを製造してもらうには、どんな誘致戦略が有効か。少なくとも韓国光州より、もっと2社の意思をくんだ誘致戦略を立てられれば、可能性があるのではないか。
日本も韓国も、「官」はもっと「民」に寄り添う姿勢がなければ、政策の実現は困難だろう。今回のフォーラム参加で、改めてそう感じさせられた。
筆者プロフィール
大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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