「推論コストをゼロ近くに」 韓国NPU新興が日本へ:最大100ラックを導入(2/2 ページ)
韓国のAIインフラ企業Rebellionsが、日本市場に本格進出する。日本のAI企業ai&と提携し、AI推論向けシステム「RebelRack」を最大100台導入する計画だ。推論に特化したNPUなどによって、AI推論の「単位コストを限りなくゼロに近づける」という。
「ほぼ全てのNPUベンダーと話した」 Rebellionsを選ぶ理由
ai&は2026年に設立された日本のAI企業で、データセンターからGPU/NPUなどの計算基盤、AI推論サービス、AIモデルまでを一体で手掛ける。単一のアクセラレーターに依存するのではなく、ワークロードに応じて複数のハードウェアを組み合わせるAIインフラを構築している。
ai& 共同創業者兼CEOのDavid Bennett氏は、Rebellionsの採用に当たって「ほぼ全てのAI NPUベンダーと話した」と話す。
選定で重視したポイントの1つが、既存のAIインフラにどれだけ容易に組み込めるかだ。ai&のように複数のアクセラレーターを組み合わせる場合、製品ごとに専用のソフトウェア環境を構築すれば、導入/運用負担が増える。Bennett氏は、Rebellionsの「No Forks」によって既存環境に近い形で導入できる点を評価したという。
判断基準は単純なベンチマーク性能ではない。Bennett氏は、AI半導体ベンダーが「性能が高い」「消費電力が低い」と主張していても、それが「実際にユーザーが使いたいモデル」で実現できるかが重要だと指摘。Rebellionsが幅広い規模のモデルに対応できる点に期待を示した。
ai&は、AIモデルを用途に応じて使い分ける「モデルオーケストレーション」の考え方を、ハードウェアレベルにも適用する。複雑な処理から比較的軽い処理までを一律に高性能GPUで実行するのではなく、ワークロードに応じてGPUやNPUなどを使い分け、インフラ全体の効率を高める考えだ。
NVIDIA GPUとの差別化は「推論の経済性」
RebellionsがNVIDIAのGPUなどの競合製品に対する差別化要因として強調するのが、AI推論の「経済性」だ。
Choy氏は、同社が重視しているのはピーク性能だけではなく、「1米ドル当たり」「1W当たり」でどれだけ推論処理を実行できるかだと説明する。設備投資と運用コストを抑えることで、同じ価格でAIサービスを提供してもサービス事業者の利益率を高められるとする。「われわれの目標は、推論の単位コストを限りなくゼロに近づけることだ」(Choy氏)
その実現に向けたポイントとして同氏が挙げたのが、サプライチェーンの合理化だ。RebellionsはSamsung FoundryやSK hynixなどを含む韓国を軸としたサプライチェーンを構築することで、コストを抑える。
NPU自体も推論処理向けに独自設計している。Rebellionsによると、同社のNPUはRISC-Vベースではなく、独自アーキテクチャを採用する。チップレット構成で、チップ上のSRAMと広帯域メモリ(HBM)を利用する。
既存データセンターにも導入、40MW体制へ
ai&は現在、国内で約12MWのデータセンター容量を運用していて、2027年末までに40MWまで拡大する計画だ。RebellionsのRebelRackも、このインフラに段階的に導入する。
Rebellionsは、既存データセンターへの導入のしやすさも重視している。Choy氏は、既存設備への導入を前提として、まず空冷で利用できる設計を採用していると説明した。
Rebellionsにとって今回の提携は、日本でAIインフラを本格的に展開する上での「大きなマイルストーン」になるという。AI推論能力に対する需要が急増する中、Choy氏は日本市場について「今は転換期にある」と語る。これまでのように新技術を小規模に導入し、時間をかけて検証した後に拡大する手法では、AI需要の伸びに対応できないとの見方だ。
GPUを含む複数のアクセラレーターを使い分けるai&と、推論に特化したNPUを中核に据えるRebellions。両社はAIインフラの選択肢を広げることで、国内で拡大するAI推論需要の取り込みを狙う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
推論領域への野心強めるNVIDIA 韓国新興と協議か
NVIDIAが、韓国のスタートアップで推論用NPU(Neural Processing Unit)に強みを持つRebellionsと協議を行っているという。技術提携のみならず、出資や買収も視野に入れているとされる。
Cerebrasが上場 NVIDIA対抗馬の「試金石」となるか
AIチップを手掛ける米Cerebras Systemsが、ナスダック市場への新規株式公開(IPO)を果たし、約55億米ドルを調達した。NVIDIAの対抗馬となる技術を提供する同社への期待値の高さが証明される結果となった。
Armが半導体の自社開発に参入、AIデータセンター向けCPU発表
Armは2026年3月24日(英国時間)、同社初の自社開発チップとなるAIデータセンター向けCPU「Arm AGI CPU」を発表した。エージェント型AIワークロードの増大に対応するために設計されたもので、MetaやOpenAIなどの顧客に供給する。
半導体誘致で対照的な日韓、共通する「官」「民」のズレ
半導体工場の誘致を目指す韓国・光州のフォーラムに参加した。しかし、誘致対象のSamsung ElectronicsとSK Hynixの姿はなく、政府の熱意と企業の姿勢には隔たりがうかがえた。半導体産業を巡る状況は対照的な日韓だが、「官」と「民」の意思のズレは共通する。両国の事例から、企業の実態と意思を踏まえた半導体戦略の必要性を考える。
Samsung、高NA EUVをDRAM量産に「業界初」導入へ 28年までに
Samsung ElectronicsとASMLは2026年9月8日、高開口数(NA)極端紫外線(EUV)露光および先進半導体製造技術に関する戦略的協業を拡大すると発表。2028年までに「業界初」(両社)となるDRAM量産への高NA EUV露光装置導入を実現する計画だ。
