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Appleの最新プロセッサ「A5」、倍増したチップ面積の謎に迫る(後編)製品解剖 プロセッサ/マイコン(4/4 ページ)

「iPad 2」に搭載されたA5プロセッサは、「iPad」のA4プロセッサに比べてチップ面積が34mm2も増えた。この増加分はA4のチップ面積の64%に相当する。AppleはCPUとGPUをデュアル化しただけでなく、他にも差別化につながる回路を組み込んだに違いない。

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大胆に動く

 AppleのA5を表現するのに「大胆」という言葉ほどふさわしいものはない。このような大型のチップを設計するのは、かなり大胆な行動である。確かにA5の「CPU+GPU」という組み合わせは、A4でこれに相当する部分に比べるとかなり大きい。ただしA5では、これらの中核要素の他にも、A4のチップ面積の64%に相当する34mm2が新たに追加されている。この追加領域には、もちろん外部から調達したIPコアも搭載されているだろう。しかしまた、SoCを社内で設計するその狙いをしたたかに具現化する、Appleのカスタム回路も集積されているはずだ。

 A5でチップサイズが一気に大型化したことで、ウォール街のアナリストの間ではチップのコストに関する議論が巻き起こったが、それは重要な点を見落としている。A5の大型化は、AppleがAシリーズのSoCプラットフォームを育んでいく過程の中に、確固たる考えに基づいて設けたステップである。同社は、このような大型のSoCのコストはよく理解しているが、システム全体の性能という観点から、シリコンの追加コストに十分に見合うメリットが得られると判断しているのだ。また、このSoCによって、他のチップのコストを低減できたり、消費電力を削減できたりといったメリットもあるのだろうか? この点については、システム全体を考慮する必要がある。

 このような大型SoCの設計は、消費者向けデバイスの市場において既存のシェアを維持したり、より多くのシェアを獲得したりするための戦略的なビジネス判断になるはずだ。Appleは今、ハードウェア設計とOSの両方を自社の管理下に置いており、それによって興味深い可能性が生まれている。

 自社で急ごしらえしたIPコアでも、外部から調達した市販のIPコアに比べれば、幾らかの差別化はできるかもしれない。しかしAppleは、今後さらにカスタム回路設計の道を突き進む計画を立てているようだ。一般的なSoCは、獲得し得る最も広範なOS市場に対応できるように、高い汎用性と柔軟性を備えていることが求められる。その要件を超えたところにこそ、ハードウェアとソフトウェアの革命的なプラットフォームが誕生する可能があるのかもしれない。



Paul Boldt氏 カナダの技術コンサルティング企業であるned, maude, todd & rodの創設者で、現在は社長を務めている。McMaster Universityで材料科学の博士号を取得した。

Don Scansen氏 IP(知的財産権)関連の顧客を対象にした技術コンサルティング企業であるIP Research Groupのパートナー。University of Saskatchewanで電子工学の博士号を取得しており、カナダのオンタリオ州が認定するプロフェッショナルエンジニアである。


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