Apple製品のヒットで、Samsungのファウンドリ売上高は大幅増加:ビジネスニュース 業界動向
Appleの「iPhone」や「iPad」が好調なおかげで、同製品のプロセッサを製造しているSamsungのファウンドリ売上高が飛躍的に伸びた。一方で、Appleはプロセッサの製造委託について、Samsung以外のファウンドリ企業と交渉を進めるとも言われている。
米国の市場調査会社であるIC Insightsは、2012年のファウンドリ売上高の予測を発表した。これによると、Samsung Electronicsのファウンドリ売上高の成長率は、2011年の82%増に続き、2012年も54%増を達成する見込みだという。
IC Insightsによれば、Samsungのファウンドリ売上高は、2011年には21億9000万米ドルだったが、2012年には33億8000万米ドルに達するとみられる。このためSamsungは、IDM(垂直統合型のデバイスメーカー)各社のファウンドリ売上高ランキングにおいて首位の座を十分狙えるだけでなく、ファウンドリ企業全体の中でも第4位にランクインする見込みだという。IC Insightsの予測通りであれば、Samsungは、2010年に12億1000万米ドルだったファウンドリ売上高を、2012年には約3倍にまで増大させることになる。
ファウンドリ専業のTSMCは、2012年における同事業の売上高が、前年比15%増となる約167億2000万米ドルに達し、ファウンドリ企業全体の中で引き続き首位の座を維持する見込みだ。同じく専業のGLOBALFOUNDRIESは、今回の2012年のランキングにおいてUMC(United Microelectronics Corporation)を追い抜き、第2位を獲得するという。ただし、首位のTSMCの合計売上高は、第2位のGLOBALFOUNDRIESの売上高の約4倍に相当し、大きな差がつく見込みだ。
Samsungは2011年に続き2年連続で、上位12のファウンドリメーカーの中で最も高い成長率を記録する見込みだという。このような急激な成長は、Appleの成功によるところが大きい。IC Insightsによれば、Appleは、2012年におけるSamsungのファウンドリ売上高全体の約85%を占める。Samsungは、Appleの「iPhone」および「iPad」に搭載されているプロセッサ「A4」と「A5」の製造を手掛けているためだ。
Appleがこれまで、ファウンドリメーカーとしてのSamsungに大きく依存してきたことからも、両社が特別な関係にあるのは明らかである。しかし両社は現在、特許係争を繰り広げており、Appleは、「SamsungのスマートフォンがiPhoneの特許を侵害している」と主張している。AppleにとってSamsungは、長年にわたりロジックICやメモリチップを供給してきたサプライヤでもある。
AppleとSamsungが対立状態にあることから、AppleがSamsungからTSMCに製造委託先を移行するのではないかとの憶測が、ここ1年ほど飛び交っている。IC Insightsは、「Appleは、ファウンドリをSamsungに依存しすぎている状況から脱却すべく、製造委託先の“多様化”を図ろうとしている。しかし、Appleが実際に委託先を決定し、それに移行するまでには、数四半期ではなく数年間を要する見込みだ」と分析している。
IC Insightsによると、TSMCの製造工場の稼働率は、2012年半ばまで100%を超える状態だったという。そのため、Appleに大量の生産能力を割り当てる余裕はないとされる。
IC Insightsは、「Appleが、プロセッサの製造についてTSMCや他のファウンドリと交渉を始めれば、SamsungはAppleからの受注減を補うために他の大口顧客を探す必要が出てくるだろう」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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