ARMの次期CEOが抱える10の課題(後編):ビジネスニュース オピニオン(1/3 ページ)
ARMの新CEOが直面するであろう10個の課題を挙げる後編。中国の産業機器市場でどう勝負すればよいのか、投資や買収の加速といった点にフォーカスする。
前編に続き、ARMの次期CEOのSimon Segars氏が立ち向かわなければならない10個の課題を挙げる。
【6】中国の産業機器市場で、デザインウィンを獲得する
ARMは中国のスマートフォン市場で大きな成功を収めており、同社にとって中国は2番目に大きな市場となっている。過去数年間をみると、中国のほとんどのファブレス企業が同市場で急成長している。
しかし、中国のアプリケーションプロセッサベンダーからロイヤリティを徴収し続けるのは難しいだろう。ベンダーの数があまりにも多いことと、その多くがいずれは消えていくと思われるためだ。
民生向けSoC市場から撤退したこれらの中国ベンダーが次に狙うのは、中国の産業機器向けIC市場だ。ただし、産業向けIC市場への参入は、IPコアを持たない中国のファブレス企業にとって容易なことではないだろう。
産業市場は、規模は大きいが、細分化している。産業向けIC市場に参入する半導体サプライヤには、特定の市場セグメントにおける知識と経験、豊富なIPコアのポートフォリオが求められる。これは、何も産業機器分野に限ったことではない。自動車、スマートグリッド、医療、組み込みシステムなど、どの分野であっても言えることだ。
ARMは、中国の新興ファブレス企業をサポートする体制をどの程度整えられるのだろうか。中国の産業機器市場への参入は、ARMにとって逃すことのできない大きなチャンスである。
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【7】投資と買収を加速する
2012年末時点で、ARMのネットキャッシュ(手元資金)は、5億2020万ポンド(約788億2028万円)だった。
ARMはここ数年、“その場しのぎ”の小規模な買収や投資を行ってきた。しかし、Segars氏は今こそ、戦略的な投資を実施すべきではないだろうか。ARMが現在抱える技術的な課題に対して、積極的に投資すると同時に、長期的な目標を見据えて、将来性のある企業や技術の買収に資金を投じることも必要だ。
現CEOのEast氏は、投資に関しては保守的だった。それも悪い事ではないが、Segars氏は、ARMにとってプラスになる投資や買収の機会を逃さないようにすべきだ。そうでなければ、他の企業が画期的な次世代技術を獲得してしまうことになる。そうしたリスクは何としても回避すべきだ。Intelの投資部門であるIntel Capitalにあやかり、“ARM Capital”という投資部門を設けてはどうだろうか。
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