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電力という不思議なインフラ(後編)〜原発を捨てられない理由〜世界を「数字」で回してみよう(7)(4/4 ページ)

多額の負債を抱えている東京電力。「返済はやめた」とは言えませんが、「原発やめる」とも言えないのは、なぜなのでしょうか。そこには、東京電力だけでなく、政府や金融機関、「原子力損害賠償支援機構」なるものの事情が複雑に絡み合っているという背景がありました。これらを、かの有名な「あしたのジョー」にたとえて説明してみます。

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【付録】続・それでも、へこたれない後輩研究員

 前編で登場してもらった後輩の研究員君に、今回もこのコラムを読んでもらったところ、すぐに私にかみついてきました。彼は、私にかみつくのが趣味なのかもしれません。

後輩:「江端さん。江端さんの『廃炉をすると、廃炉ができなくなる』の結論は変です!」
江端:「そうかなぁ? だって、このまま廃炉すると、電力会社が倒産してしまうよ」
後輩:それが何だと言うのですか?

 ―― え?

江端:「え? え? なんで? 廃炉を実施する会社がなくなってしまうんだよ?」
後輩:「電力会社を全部国有化して、さらに廃炉費用に税金投入すればいいじゃないですか。もし国有化を避けたいのであれば、電力料金に上乗せしてもいいし」
江端:「『1兆2000億円強』だよ」
後輩:「たかだか、『1兆2000億円強』じゃないですか」

 ―― たかだか?

 早速、数字を回してみました(というような、エラそうなものではありませんが)。

 1兆2000億円強を、日本国民の人数で割ると、1人当たり9760円になります。

 ―― あれ? 1人1万円いかないの?

 4人家族の江端家は、4万円負担すれば、日本の原子力発電所は、理屈上、全て廃炉できるってことですか?

 いやいやいや、何か違うんですよね? こんな簡単な話ではないですよね?

 誰か私に、「(『廃炉』の話に限って言えば)その数字の回し方は間違っていますよ」と、電子メールで『やさしく(易しく&優しく)』教えていただけませんか。

 お許しを頂ければ、私のホームページ、またはEE Times Japan編集部にこの連載の番外編を企画してもらって、送っていただいたメールを全文掲載致します(編集部注:歓迎致します)。


 それにしても、この「へこたれない後輩」は、私にとって、悪魔なのか天使なのか、本当に分からなくなってきました。


※本記事へのコメントは、江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。


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Profile

江端智一(えばた ともいち)

 日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。

 意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。

 私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。



本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。



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