IoTネットワーク拡大へ、業界内の競争も激化:ビジネスニュース 業界動向(2/2 ページ)
モノのインターネット(IoT)向けネットワークの構築が本格化するにつれ、通信業者の競争も激しくなってくる見込みだ。フランスの新興企業Sigfoxは、一歩抜きんでようと試みている。
電池だけで5〜20年間の動作が可能な基地局
現在4社の企業が、市販の800〜900MHzトランシーバにSigfoxのソフトウェアを搭載し、基地局の設置を進めているところだ。ただし、これらの社名については明かされていない。今のところ、欧州内で42万平方マイル(約105万km2)を網羅している。そのカバレッジは、地下水メーターなどを対象とした数kmというレベルから、米国の巨大メディア企業Clear Channelが稼働させているインターネットに接続された広告板などを対象とした、500kmに至るものもあるという。
各基地局は、電池だけで5〜20年間の動作が可能だとしている。ただし、技術と規制のいずれの面でも制限がある。例えば、データ伝送速度が100〜600ビット/秒に限られている他、送信については12バイトのメッセージを1日最大140件まで、受信は8バイトのメッセージを1日最大4件までとなっている。
Sigfoxの代表者は、「ユーザーは独自の語彙(ごい)を使って、2〜3バイトで多くの情報を伝達する工夫をしている。当社のIoTアプリケーションの上限までデータ送信するユーザーはいない」と述べている。
基地局のコストは、1基あたり約4000米ドルである。シミュレーションでは、1日に10メッセージを送信するエンドノードを100万台サポートできたという。
Machina ResearchのCastonguay氏によると、Sigfoxの回線使用料は、データ送信量によって年間1〜16米ドルだという。携帯電話機でいえば、1〜2日分のコストしかかからない。
Sigfoxは、IoT向けソフトウェアの特許を取得している。さらに、フランスの通信大手Orangeなど数社からの支持を獲得し、欧州電気通信標準化機構(ETSI)の標準規格グループからアドホック仕様も発表されている。Sigfoxは専門家を招いて、公式規格の策定に取り組んでいるという。ただし、策定が完了するには数年かかる見通しだ。
Sigfoxは現在までの6年間で3500万米ドルの資金を調達したが、今回の投資ラウンドではその倍となる7000万米ドルの資金調達を目指す。同社は、パートナーと資金を募って、米国に国内ネットワークを展開したい考えだ。また、衛星を介したグローバルネットワークの構築に向けて、ある企業と提携したという。ただし、この企業名については明らかにしていない。
Castonguay氏は、「Sigfoxの競合企業は少なくとも5〜6社あり、各社が異なる方針をとっている」と述べている。
同氏は、「これらの企業はIoT分野の先駆者であり、けん引する地位を確立している。ただ、通信事業者は、IoTを競合技術と捉えることが多い。この課題に対処するには、衛星通信事業者と提携するのが賢明だ」と指摘している。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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