Amazon「Fire Phone」の失敗から、エンジニアが学べること:ビジネスニュース オピニオン(2/2 ページ)
満を持して投入されたAmazon「Fire Phone」ではあるが、業界内では「失敗」との見方も強いようだ。開発エンジニアは、製品開発コンセプトについて、Fire Phoneから何を学べるのだろうか。
“前提の失敗”を回避する
筆者はいつも、製品の設計段階において顧客企業と打ち合わせをする際に、かつてGoogleでエンジニアリングディレクタを務めた経歴を持つAlberto Savoia氏の優れた洞察力について話をする。Savoia氏は、製品開発が失敗に終わる重要な要因の1つとして、“前提の失敗”を挙げる。同氏によると、初期概念に問題があれば、最初の段階から間違った製品を作ってしまうことになるという。
実際には、製品は設計された通りに機能していて、開発チームは懸命な取り組みによって堅ろう性と信頼性を兼ね備えた製品を完成させているなど、ほとんどのことが正しく進められているように見えるかもしれない。しかし消費者は、その製品が最初の段階から自分たちのことを念頭に開発されたものでないことが分かると、買いたいとは思わないと即座に判断するのだ。
試作品の作成(プロトタイピング)
Savoia氏は、試作品を作成することによって失敗を回避できるとし、その手法について要点を述べている。エンジニアは、試作品を作成するプロセスを通して、正しい製品を作っているのだということを確信してから、開発に着手することができる。
従来の試作品は、貴重な時間や資源を費やして作成しても、複雑な機能を搭載するためだけのものになってしまっている。型にはまらないアイデアと高性能な製品との中間的な存在として試作品を位置付けることにより、時間もコストもかかる失敗を避けることが可能になるのだ。
例えばPalmは、同社の電子手帳「Pilot」の開発にあたり、試作品を使って前提を検証してから、エンジニアチームをプロジェクトに配置したという。開発チームはまず最初に、Pilotと同じ大きさの木製のブロックを作った。それをポケットに入れて持ち運ぶという試験を数週間にわたって行うことにより、そのフォームファクタが現実的かどうかを検証したという。
「機能」ではなく「ユーザー体験」に焦点を
コンセプトの段階から製品提供までの道のりを進むのは、驚くほど難しいという現実を知っておこう。エンジニアチームに必要なのは、製品の機能ばかりに焦点を当てるのではなく、その事業の価値は何なのか、(その製品を開発することで)顧客はどんな満足が得られるのか、そういったことに、より焦点を当てることである。
これによって開発者も、単に「今、コードを数行書いている」と考えるのではなく、「素晴らしいユーザー体験を作り出すための重要な局面において、責任を担っている」というように、発想を変えられるのである。
AmazonのBezos氏が、先見の明を持っている指導者であることは間違いないだろう。同社は、異なる数多くの市場において成功を収めるという偉業を成し遂げているからだ。
Fire Phoneの“失敗”は、輝かしい業績を持つ企業の現状を示しているのではなく、現状を一変させるようなイノベーションを提供しようとすれば、いかなる企業も計り知れない困難に直面するのだということを知らしめているのではないだろうか。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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