MWC 2015で展示の新型プラットフォームや道路状況管理技術などを披露:無線通信技術
Ericsson(エリクソン)は、拡張性や経済性に優れたクラウドシステム向けプラットフォームや、走行中の車両と道路状況の情報を共有して、交通安全の向上や渋滞緩和を目指すクラウドシステムなどを「Mobile World Congress(MWC)2015」でデモ展示した。
エリクソン・ジャパンは、2015年3月19日に開催した記者説明会で、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress(MWC)2015」(2015年3月2〜5日)におけるEricssonブースでの注目技術/製品について紹介した。
Ericssonは、「WE ENABLE CHANGE-MAKERS」を2015年のテーマとして掲げ、4つの分野で新技術/新製品を中心に提案を行った。その分野とは、オペレータが収益性を確保できるように革新的なサービスを提供する「GROW」、新しい仕組みで事業の拡大を支援する「DRIVE」、ネットワークの性能を最適化する「PERFORM」、そしてICTを活用して新たな機会を創出する「EXPLORE」の4つである。
会場では4つの分野に対して、11件の新規製品/サービスを発表しデモ展示を行った。「Ericsson Radio System」、「Hyperscale Cloud」、「Router 6000 series」、「Expert Analytics 15.0」、「Networks Software 15B」、「App Experience Optimization」、「Connected Traffic Cloud」、「Media Delivery Network」、「Digital Telco Transformation」、「Maritime ICT Cloud」、そして「LTE LAA(License Assisted Access)」である。この中から、いくつかの概要を紹介する。
自動者、船舶などに向けた先端クラウドシステム
Hyperscale Cloudは、Intelのラックスケールアーキテクチャを用いたハードウェアシステム。エリクソン・ジャパンのCTO(最高技術責任者)を務める藤岡雅宣氏は、「コンピュータ、ストレージ、ネットワークなどの装置が個別に提供されるため、用途に合わせて最新のハードウェアを組み合わせることができる。このため拡張性や経済性に優れている」と、その特長を説明する。まずは自社のデータセンターに設置し、2016年には外販を始める予定だという。
Connected Traffic Cloudは、道路を走行している車両から吸い上げられた危険度の高い情報(事故、急ブレーキ、スリップなど)を交通センターで管理し、そのエリアにいる他の車両に危険を回避するための情報をフィードバックするネットワークシステムである。
このシステムには、ジオメッセージングと呼ばれる仕組みが用いられている。地面を任意の大きさのタイル(1辺が500m〜2km)に分割し、GPSなどと連携して車両の位置や移動方向などを特定する。センター側では、どのタイルに車両がいるかを常に把握しているため、危険度の高いエリア(タイル)にいる後続の車両に対して、その情報を知らせることができるというわけだ。
藤岡氏は、「システムとしては2007年ごろから開発を手掛けているが、まだ製品レベルではなく構想段階にある。ドイツのCONVERGEプロジェクトで、2015年6月よりシステムの評価試験が行われる予定である」と話す。
Maritime ICT Cloudは、車両向けクラウドシステムの基本的な考え方を、船舶に応用したシステムである。船舶の乗客/乗組員に対するサービスや積荷も含めた安全性の向上、航行ルートを含めた燃費効率の改善などを考慮したソリューションとなる。
LTE LAA
LTE LAAも注目テーマの1つである。免許を必要とする周波数帯域と2.4GHz/5GHzなど無線LANで使われている免許不要な周波数帯域を組み合わせて、高速大容量通信を可能とする技術である。会場では実際のデモも行われ、QualcommのLAA対応端末とWi-Fiモデムが共存できることが示されたという。藤岡氏は、「米国ではLTEとWi-Fiの共存についての法的制約がなく、2015年4Q(10月)以降にトライアルベースの製品を提供していく。日本市場では、データを送信するバースト長が4msなどの法的制限もあり、すぐに対応することはできないが、課題解決に向けて総務省などと協議を行っていく」と語った。
また、藤岡氏はMWC2015会場における全体的なトレンドも紹介した。NFV(Network Functions Virtualization)は、従来のトライアル的な紹介から、より具体的な技術展示となり、現実的になってきた。LTE-Advancedはキャリアアグリゲーションから、LWA(LTE WiFi Aggregation)など次の段階に進んできた。IoTとウェアラブル機器については、VRヘッドセットやスマートウォッチなどの具体的な製品が登場するとともに、これまでより多くのブースで自動車が展示され、コネクテッドビークルのデモが行われた。5G関連はIoTと組み合わせた応用システムの訴求が目立っていた、などと総括した。
関連キーワード
Ericsson(エリクソン) | LTE(Long Term Evolution) | クラウド | CTO | ICT | Mobile World Congress | トライアル | キャリアアグリゲーション | 無線通信技術(エレクトロニクス)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- エリクソンなど3社が、FDD/TDDキャリアアグリゲーションを実現
エリクソンとSingTel、Qualcomm Technologiesの3社は、商用のハードウェアとソフトウェアを用いたLTE-Advanced FDD/TDDキャリアアグリゲーションのライブデモに成功した。今回のデモにおいて、ダウンリンクで最大260Mビット/秒の通信速度を達成している。 - エリクソンが考える“2020年の移動通信”
エリクソン・ジャパンは、「5G(第5世代)」と「3GPPリリース13」を中心とした、「2020年に向けた移動通信の進化」について記者説明会を開催した。エリクソンでは、2020年ころに商用化が予定されている5Gを、単なるモバイル技術の進化ではなく、『ネットワーク化社会のためのネットワーク』と位置付けている。 - MWC 2014で展示の超小型基地局やネットワーク仮想化技術を国内で披露
大手基地局メーカーのEricssonは、超小型基地局の「Radio Dotシステム」や、ネットワーク仮想化に向けた「vEPC(Virtual Evolved Packet Core)」などを「Mobile World Congress(MWC)2014」でデモ展示した。フィリップスやシエナなどパートナー企業との共同開発した製品や技術も来場者の注目を集めた。 - 通信事業者の競争力を向上、エリクソンのSDN対応SSR
エリクソンは、Software Defined Networking(SDN)で制御対象をデータセンターに限定せず、ネットワーク全体にまで拡張した「サービスプロバイダSDN(SP SDN)」を提唱している。2013年10〜12月にはSP SDNに対応する最初のSSR(Smart Services Router)を出荷する予定だ。 - Ericsson、MWC 2013でLTE-Advancedのデモを予定
Ericssonは、「MWC 2013」において、LTE-Advancedを前面に押し出したデモを披露する。また同社は、OpenFlowを含めて、クラウド/仮想化やSDNをサポートする計画についても発表する予定だ。