HMDはディスプレイだけで勝負する、「エアスカウター」が720pに進化:多機能は要らない(2/2 ページ)
ブラザー工業が、透過型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)「AiRScouter(エアスカウター)」の新モデルを発表した。720p(1280×720ピクセル)の解像度を持つ同モデルは、とにかくディスプレイ機能の強化を最優先にしている。組み立て業務支援や、医療分野など、確実なニーズがある市場を狙う。
ニーズのあるところで、確実にシェアを取る
ブラザー工業が、AiRScouterの既存品「WD-100G」「WD-100A」を発売したのは2012年だ。だが、「国内だけで販売し、海外ではテスト的に投入していただけということもあり、出荷台数がそれほど伸びたわけではなかった」(同社)という。さらには、競合他社品も市場に投入され始めている。そうした競合品に対する強みについて、同社は「あえてディスプレイに特化したこと」と即答した。「いくつか発表されている他社品は、センサーを搭載していたり、両眼だったり、カメラを搭載していたりと(さまざまな機能が)複合化されているものが多い。そのようなモデルとは一線を画している」(同社)。
今回の販売目標は、3年間で国内では1万2000台、世界全体で3万台だ。これも決して大きな数字とはいえない。ブラザー工業も、市場自体がまだそこまで大きくないことは自覚しているという。
一方で、先述した透析治療のように、ヘッドマウントディスプレイに対して確実なニーズがある市場もある。「当面は、切実なニーズがある分野に確実に応えられるようにしたい」と、ブラザー工業は語る。「単眼のディスプレイ」に徹した製品を、ニッチでも確実にニーズがある分野で売っていく。これが、AiRScouterに対する同社の戦略だ。
また、組み立て業務支援や遠隔作業支援、医療だけでなく、ドローンの操作やセキュリティ、巡回警備など、新しい応用分野も広がっている。「応用できる市場の可能性は高いので、積極的なマーケティング活動を行っていきたい」(同社)。
なお、ブラザー工業は以前、網膜走査ディスプレイの開発を手掛けていた。だが同ディスプレイについては、既に開発をやめている。旧モデルのAiRScouterも、網膜走査ディスプレイではなく、光源にLEDを使った透過型の液晶ディスプレイである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「眼鏡と変わりない装着感」の網膜走査型スマートメガネ
QDレーザと東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構は共同で、レーザー網膜走査型ディスプレイのウェアラブル情報端末「レーザアイウェア」の基盤技術開発に成功したと発表した。両者は、「装着感、外観ともに通常の眼鏡と違和感の無い新タイプの眼鏡型情報端末の製品化へメドを付けた」とし2015年内に製品化する方針。 - 「もう4Kには戻れない」――8Kディスプレイ、医療分野でのニーズ高く
「第25回ファインテック ジャパン」では、98インチ8Kの液晶ディスプレイや、260インチ4KのLEDディスプレイなど、大型ディスプレイの展示が目を引いた。8Kディスプレイは、医療分野でのニーズが高まっていて、医師からは「もう4Kには戻れない」という声も出ているという。 - ルービックキューブで感じるスマートグラスの可能性
セイコーエプソンは2014年10月7〜11日に千葉市の幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN2014」(シーテック ジャパン)でメガネ型のウェアラブルデバイス「MOVERIO(モベリオ)」を使った「ルービックキューブ」の攻略ガイドデモなどを披露した。 - 有機ELディスプレイ、“フレキシブル”に活路見いだす
フレキシブルな有機ELディスプレイの開発が進んでいる。市場も2014年以降に大きく成長すると予想されていて、2016年には自由に折り曲げられるものが登場するとの予測もある。