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次々世代のトランジスタを狙う非シリコン材料(1)〜なぜ非シリコンなのか:福田昭のデバイス通信(33)(2/2 ページ)
今回からは、非シリコン材料を使ったMOSFET開発に焦点を当てる。微細化技術が行き詰まりを見せている中、非シリコンへの注目が高まっている。それはなぜなのか。また、非シリコン材料の候補には何があるのだろうか。
ゲルマニウムとインジウム・ガリウム・ヒ素が有力候補
シリコン(Si)に代わる高移動度材料の候補はいくつかある。まず、ゲルマニウム(Ge)である。Geは電子移動度と正孔移動度の両方ともに、物理的にはSiよりも高い。ここで物理的にとは、集積回路に使われる薄膜での値ではなく、バルク(塊)で測定された値を意味する。絶対値としては薄膜よりもバルクが高い。薄膜になると移動度はバルクに比べて低下する。
Geをトランジスタ材料に選択するときは、SiとGeの混晶(SiGe)をチャンネル材料とする場合と、Ge単体をチャンネル材料にする場合とが考えられる。シリコンウェハーを基板にしてGeを成長させるとSiとGeの間で格子不整合(格子定数の違い)による歪が発生し、Geの結晶品質に悪影響を与える。この問題を緩和するためにGeではなく、SiGe混晶を採用することもある。
SiGe混晶では、Geの組成比をx、Siの組成比を(1-x)で普通は表現する。例えばGeの組成比が0.3(x=0.3)のときは、Siの組成比は0.7になる。Geの高い移動度を生かすには、xは0.5〜0.7といった値にする必要がある。
Ge以外の有力候補は、化合物半導体のインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)である。InGaAsは電子の移動度が飛び抜けて高い。Geよりも高い。ただし、正孔の移動度は低い。バルクでの値は不明なのだが、薄膜ではシリコンに近い程度だとみられる。
(次回に続く)
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