スマホ失速は、Samsungに限ったことなのか:先進国は既に飽和状態……(2/2 ページ)
スマートフォン市場への懸念が拡大している。Samsung Electronics(サムスン電子)がこのほど発表した2015年第2四半期決算で、2015年後半のスマートフォンビジネスに不安を表明したためだ。Samsungのビジネスが不調なのか、それとも、スマートフォン市場全体が低迷期に入りつつあるのだろうか。
新興市場に期待するも
ほとんどの業界アナリストは、スマートフォンの飽和は新興市場ではまだ起きていないという見方で共通する。だが、TIRIAS Researchの創設者で主席アナリストのJim McGregor氏は、「スマートフォン市場の構造は変わりつつある」と分析している。
McGregor氏は、「(これからスマートフォンを手にするであろう)“次の20億人のユーザー”や今後20年でのミドルクラスの成長について誰もが語りたがるが、それらのトレンドが価格やTAM(Total Addressable Market/潜在需要も含めた考え得る最大市場規模)にもたらす影響を分析できていない」と記した。
さらにMcGregor氏は、「台数面ではまだ大きく伸びる可能性があるが、“次の20億人のユーザー”の平均収入は典型的なiPhoneユーザーに比べはるかに低い。結果として、スマートフォンの平均販売価格は下落し続け、市場規模は徐々に横ばいになっていくとみられる」と述べた。
Linley GroupのGwennap氏は、新興国でスマートフォンではない従来型携帯電話機を使うユーザーがいまだ数多く存在することに言及した。
Gwennap氏は「スマートフォンとデータサービスの価格が下落し続けていることから、従来型携帯電話機ユーザーも今後スマートフォンに移行するとみられる。当社は、現在世界中で使われている全ての携帯電話機のうち70%がスマートフォンであると推定している。スマートフォンの販売台数は2015年の15億台から2020年には21億台に伸びる見込みなので、携帯電話全体に占めるスマートフォンの割合も2020年には83%に伸びるだろう」と述べた。
恐らく、これは良いニュースだ。だが、Gwennap氏は「この伸びのほとんどは、ローエンドのスマートフォンによるものになる」と警告した。
Samsungのジレンマ
Samsungのスマートフォン事業は、板挟みで動きが取れない状態にある。Huawei Technologies、Xiaomi、Lenovo、Oppo、Vivoといった数多くの中国のスマートフォンベンダーが台頭し、Samsungのローエンドからミドルレンジの携帯電話機事業をじりじりと追い上げているからだ。
特にHuaweiの急速な追い上げの影響が大きい。
TrendForceはHuaweiの成長の要因として「中国国外市場でのまずまずの販売実績」と「通信事業者との安定した関係」を挙げた。TrendForceは「Huaweiの年間出荷台数は40%近く増加し、2015年に出荷台数が1億台を超える初めての中国スマートフォンベンダーになる」と予測している。
ローエンドスマートフォン市場の競争が激しさを増す一方、Samsungはよりハイエンドのスマートフォン市場でAppleの手ごわい攻めに直面している。
Forward ConceptsのStrauss氏は「Appleのスマートフォンは中国社会で“持っていて自慢できる端末”として地位を得ているが、Samsung製品の評価はそこまでではない。近いうちに“iPhone 7”が発売されることから、Appleの中国での好調は続くとみられる」と述べた。
Gwennap氏はSamsungがAppleにシェアを奪われる主な原因について、「それまで抑圧されていた大画面iPhoneへの需要が、iPhone 6や6 Plusの堅調な販売につながった」と説明した。一方で、同氏は「大画面iPhoneが入手可能になってからしばらくの期間が経過しており、Appleの成長は次の数四半期では停滞する可能性がある」と分析している。
Appleに対するSamsungのブランド力不足とは別に、TIRIAS ResearchのMcGregor氏は、Samsungの最新スマートフォン「Galaxy S6」の設計上の問題を、不振の原因として指摘した。McGregor氏は「Samsungはデュアルエッジスクリーンのモデルを投入している間、“メモリのアップグレード、電池交換可能”というAndroidユーザーが好む2つの機能がないiPhoneのようなデザイン機能に、基本的に戻ってしまった」と説明した。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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