IBMの「Watson」、スポーツ分野に浸透へ:人工知能の新市場(2/2 ページ)
IBMの人工知能「Watson」が、スポーツ分野で採用され始めている。Watsonを搭載したヘッドバンドを選手に取り付け、脳震とうを起こしてないかをトラッキングするといった方法で使われている。
ゴルフやホッケーでも
Spare5は、Watsonを利用してゴルフの技術向上をサポートしていくという。13 Industriesは、より豊かなスポーツ観戦体験をファンに提供することを目指していく考えだ。現在、WatsonのAPIは、スポーツやエンターテインメント、小売業、旅行、ヘルスケアサービス、金融サービス、法的事項、教育など、17種類の幅広い産業分野をターゲットとしている。
これらの産業分野に共通しているのは、理解するのが難しい図表やグラフなどのデータを引き出すのではなく、自然言語でのコミュニケーションが求められるという点だ。体系化されていない大量のデータを分析して、口頭による質問に対し、確固たる根拠に裏付けられた合理的な回答を提供することが必要とされている。
IBMによると、Watsonの“言語サービス”を搭載すれば、例えば感情などの、より多くのデータソースが組み込まれることによって、デバイスのさらなるスマート化を実現できるという。
認識/社会特性を推察することで、アスリートの安全性やパフォーマンスに関する全体像を提供することができる。Spare5は、Watsonの能力にコンピュータビジョン機能を追加することにより、同社が手掛けるアプリ「Watson Golf Pro」を、“専属キャディ”として機能させたい考えだ。どのクラブを使えばよいかをアドバイスしたり、さまざまなテクニック(バンカーから抜け出す方法など)を教える他、練習方法を指示してリアルタイムでフィードバックを提供することなどが可能だという。これをプロのゴルファーに頼むとなると、数百米ドルのレッスン料がかかる上に、Watsonのディープラーニング(深層学習)技術を利用してスイングを分析してもらうこともできない。
113 Industriesは、Watsonを採用した、顧客情報分析サービス「Pi」を提供している。同サービスは、米国ペンシルベニア州ピッツバーグのアイスホッケーチーム「ピッツバーグ・ペンギンズ」に採用された。ピッツバーグ・ペンギンズは、ペンシルバニア州の屋内競技場であるCONSOL Energy Center(コンソル・エナジー・センター)に競技を見に来た来場者の情報などを分析し、よりよいユーザー体験の提供に生かすという。
Triax Technologiesのヘッドバンドを身に着けたコーチは、脳震とうを起こすなど、即座に対処することが必要な選手の情報を、リアルタイムでスマートフォンやタブレット端末に表示することも可能だ 出典:IBM
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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