偽造ICを判別できる“魔法の粉”、その正体は?:光を当てて識別(3/3 ページ)
米国の新興企業が、偽造薬品や偽造チップを判別する新しい技術の開発に取り組んでいる。同技術の要となっているのが、直径数ミクロンという非常に小さな粒子だ。
日本では、手応えまだ弱く
TruTag Technologiesは、現在は主に欧米の市場をターゲットとしているが、日本を含め、世界中を視野に入れている。TruTagの技術を日本に広めるための活動を行っているのが、企業経営コンサルティングを手掛けるAZCA(アズカ)だ。シリコンバレー(メンローパーク)に本拠地を構える同社は、グローバル市場での新規事業開発および事業展開を支援している。米国の他、日本や香港、韓国、中国にもオフィスを設置している。
AZCAは、2015年9月からTruTag Technologiesの支援を行うプロジェクトを開始している。同プロジェクトを担当するAZCAの津山学氏は現在、製薬会社や自動車メーカー、半導体メーカー、家電メーカー、さまざまな分野の工業会にコンタクトを取り、偽造品について情報を集めているという。ただ、現時点では思うような手応えは得られていないようだ。
津山氏は、「日本の大手メーカーだと、サプライチェーンが非常に強固なため、そもそも偽造品が入り込む隙がない」と話す。日本でも、電子部品の不具合による事故はある。だがそれは、誤って偽造品を使ってしまったからではなく、設計の不具合などによるものが多い。「自動車のティア1サプライヤーに話を聞いたところ、(正規販売者ではない)アフターマーケットでは、オイルフィルターやスパークプラグなどで、特に中国製の偽造品が出回っているそうだ。これらはいずれも数百円で売られているもので、ティア1サプライヤーとしては、こうしたアフターマーケットにも対策を施そうとしても、費用対効果が低過ぎる」(同氏)。
津山氏は、「バッテリーにしても、メーカーとしては、“模倣品に注意してください”と明示することで十分だと考えているようだ」と続ける。
日本の半導体業界に目を向けると、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International )が、2002年末から個々のICのマーキング方法の標準化を開始している。その結果、ダイおよびパッケージに適用できる2次元バーコードの標準化が完了し、2008年に既に仕様書が発行されている。津山氏によれば、SEMIは現時点では、2次元バーコード以上の対策を施す予定はないようだという。
津山氏は、製薬会社についてはこれから情報を収集するとしているが、同氏の話を聞いている限りでは、日本では偽造品対策に対する切迫したニーズは、まだそれほど強くはない印象を受ける。ただし、TruTagを、予想もしないような用途や分野で活用できる可能性は大いにある。「どうも出どころが怪しい」――。そう感じたら、スマートフォンで光を当てれば即座に“ホンモノ”かどうかが分かる。Wuh氏が語ったような未来が実現するかもしれないのだ。
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