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人工知能プロセッサと8K UHDのH.265/HEVCデコーダ福田昭のデバイス通信 ISSCC 2016プレビュー(4)(2/2 ページ)

今回はセッション12〜14を紹介しよう。セッション14では「次世代のプロセッシング」というテーマに沿って、ディープラーニング専用コアを搭載したプロセッサや、運転者の意図を予測する機能を備えたADAS(先進運転支援システム)向けSoCなど、人工知能プロセッサの発表が相次ぐ。

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56Gビット/秒の超高速伝送を無線通信で実現

 セッション13のサブテーマは「ワイヤレス・システム」である。このセッションでは、データ転送速度が56Gビット/秒と極めて高い無線トランシーバを東京工業大学と富士通研究所が共同で発表する(講演番号13.3)。無線周波数はミリ波のW帯(75GHz〜110GHz)である。送受信ビット当たりの消費エネルギーは10pJと低い。中間周波数を2つ設けた周波数インタリーブと16値のQAMによってデータ転送速度を高めた。製造技術は65nmのCMOS。

次世代の人工知能プロセッサが続出

 セッション14のサブテーマは「次世代のプロセッシング」である。このセッションでは、韓国の研究機関KAIST(日本の産総研(産業技術総合研究所)に相当する機関)による発表が多い。全7件中、4件を占める。

 最初の1件は、メガネ型ヘッドマウントディスプレイ向けに自然なユーザー体験と操作環境を提供するプロセッサの開発成果である(講演番号14.1)。ディープラーニング(深層学習)専用コアを搭載した。消費電力は126.1mW。次の1件は、自動車の先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)に向けたSoCの発表である(講演番号14.2)。運転者の意図を予測する機能を備える。演算処理性能は502GOPS。3件目は、超小型ロボット向けの人工知能プロセッサの開発成果である(講演番号14.3)。電源電圧は0.5Vと低く、消費電力は1.1mWと少ない。最後の1件は、IoE(Internet of Everything)に向けた深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep CNN)の物体認識プロセッサの発表である(講演番号14.6)。消費電力当たりの演算性能は1.42TOPS/W。

 この他には2件の講演に注目したい。1件はMassachusetts Institute of Technology(MIT)とNVIDIAの共同研究グループによる再構成可能な深層畳み込みニューラルネットワークのアクセラレータである(講演番号14.5)。168個のプロセッシングエレメント(PE)と再構成可能なオンチップネットワークで構成されている。消費電力はモバイルGPUの10分の1以下と低く、外付けメモリ(DRAM)へのアクセス頻度は従来の5分の1に減少させたとする。

 もう1件は、早稲田大学が開発した8K UHDビデオ向けH.265/HEVCビデオデコーダである(講演番号14.7)。7680×4320画素の画像を120フレーム/秒でデコード処理したときの消費電力は690mWにとどまる。画素の処理速度は4G画素/秒と高い。

次回に続く

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