ルネサス、2020年に車載半導体シェア首位奪回へ:「2016〜17年のシェアは縮むけれど」(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスの自動車向け事業を統括する執行役員常務の大村隆司氏は、2016年1月13〜15日に開催されている「国際カーエレクトロニクス技術展」でインタビューに応じ、2020年に世界車載半導体シェアでNXP Semiconductorsを抜き、首位に躍り出る見込みであると明かした。
プロセス開発競争で先行
「2014年世界シェア37.7%」(ルネサス)で「今後も首位を維持する」(大村氏)という車載マイコンは、「今、ようやく一部の競合がサンプル品を出すか出さないかという段階の40nmプロセスのフラッシュメモリ内蔵マイコンを既に量産し大きくリードしている」(同社第一ソリューション事業本部技師長板垣克彦氏)と技術面で優位性を発揮。高性能、大容量の内蔵フラッシュメモリが要求されるエンジン制御やモーター制御分野を中心に採用数を増やしているとする。
既に40nmプロセス品の次世代である28nmプロセス品の開発に着手。2015年の国際学会で28nmプロセスの混載フラッシュメモリ技術を発表した(左図左)ほか、直近では、28nmプロセスによる試作マイコン(動作周波数400MHz)を使ってエンジン制御における性能評価テストも実施しているという(右図左)。90nm世代のBiCDプロセスについても競合よりも面積当たりの許容電流が大きいとしている(右図右)
マイコンやSoCに比べ、比較的シェアが低い車載向けアナログ/パワー半導体に関しても、「モーターと駆動ECUを一体化する“機電一体”を実現できるなど高効率で小型化できるモーター制御ソリューションの競争力が高く、(モーター駆動素子である)IGBTも順調に採用が増えている」(板垣氏)とする。
さらに、センサー後段のアナログフロントエンド回路などに用いるアナログ半導体では、90nm世代のBiCDプロセス*)の量産を2015年よりスタート。「90nm世代BiCDプロセスは、競合1社がサンプル出荷しているが量産に苦戦している状況であり、ほぼ全ての案件を獲得できているといえるほど順調だ」(大村氏)とした。
*)Bipolar(バイポーラ)プロセス、CMOSプロセス、DMOSプロセスの3種のプロセスを同時に実現する製造プロセス。
マイコン以上に高いシェアを誇るカーナビなど車載インフォテインメント向けSoCについても、「今後1〜2年は、少しシェアを落とす見込みだが、その後はすぐにシェアは戻り、伸びる見通し」とし、現在提案中のコックピット向けSoCの第2世代R-Carシリーズで一定のデザインインを獲得できていることを示唆した。
左は、自動駐車ソリューションのデモ。クラウドサーバの空車情報を基に自動走行で空きスペースに駐車する。右は、次世代コックピット
事業方針変えず
今後のルネサスの車載半導体事業方針について大村氏は、「2013年に掲げた“人と環境に優しい安心・安全なクルマ社会への貢献”というスローガンは変えない。“エコカー/燃費向上”“安全性の向上”“メンテナンス性の向上”“クルマのIT化”という4つのテーマに引き続き、取り組んでいく」と語る。
こうした事業方針の下で、自社製品はもとより、他社製品も含めシステムを構築/提案する“ソリューション提案”の強化も継続する。「従来、車載ビジネスは、OEM(=自動車メーカー)の系列の電装品メーカーへの提案が中心だった。そして、ここ数年は、複数のOEMにECUを供給するグローバル電装品メーカーが登場し、そうしたグローバル電装品メーカーに提案するビジネスの強化を図ってきた。しかし、最近では、OEM自身が、マイコンなど車載半導体を選ぶようなケースが増え、OEMに対し提案する必要が生じている。実際に動作するソリューションがあることで、OEMと会話できるようになった」とし、“ソリューション提案”が自動車業界の新たなビジネスモデルに合致した戦略であるとした。
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