今こそ問いたい――そのダイエット、本当に必要ですか:世界を「数字」で回してみよう ダイエット(28)(10/10 ページ)
ダイエットシリーズも、いよいよ最終回です。今回は、私が、150日にわたりダイエットを行った結果として得たメリットとデメリットを紹介します。結局のところ、私たちは「ダイエットに失敗する」という運命から逃れられないのかもしれません。それでも、ダイエットに関する情報は日々氾濫し、その市場が縮小することはないように思われます。だからこそ、こう問いかけたいのです。「そのダイエットは、本当に必要ですか?」と――。
後輩による辛口レビュー
後輩:「今回は、3つのトピックをぶっこんで、1つにして、無理やり最終回に持ち込んだように感じました。江端さん、疲れているんですか?」
江端:「これ以上ないくらいに疲れているよ。『○○ダイエット』というもののほとんどに根拠がなくて、論理的にも数値的に破綻しているというのに ―― 誰も、私の言うこと聞こうとしないんだもん」
後輩:「ボクサーや芸能人のようなプロフェッショナルダイエッターと、江端さんの連載の読者層では、そもそもターゲットが違うんですよ。ダイエットで自分の商品価値が決まる人は、江端さんの連載の内容なんか当然知っているだろうし、そうでない人は、そもそも江端さんの連載なんか、読まない」
江端:「なんで?」
後輩:「不愉快だから」
江端:「そうなんだよなー。例えば、私が、この1年近く宣伝していた『メールダイエット企画』だけど、申し込んできたのは結局、何人だと思う?」
後輩:「全く想像がつきません」
江端:「応募者は3人で、平均連続日数は、1.3日だ」
後輩:「そりゃなんと言うか、壮絶な失敗プロジェクトですねえ」
江端:「でも、これ、本当に効果あるんだけどなぁ。家族に、毎日メールで体重を送付するだけでも十分なんだけどなぁ」
後輩:「あ、でも、今回は素晴しく感動した部分もありました。特に、『今、痩せているなら、このダイエットは正しい』。これ名言。いろいろ考えて試した末に出た結論っぽくて素晴らしいです。『今、苦痛を感じているのであれば、このダイエットは正しく働いている』も良いですね。これも真実で素晴らしい」
江端:「そりゃどうも」
後輩:「というか、初回にこの結論が出ているのであれば、1年近くも連載する必要なんか、なかったんじゃないんですか? あ、でも、1年近くも連載したから、江端さんは、この真理に到達できた訳だし……」
江端:「……」
後輩:「あ、分かった。この連載は、江端さんにとっては意義あるものだったかもしれませんが、読者にとっては迷惑極まりない連載だったと、つまり、そういうことですよ!」
江端:「……」
後輩:「ああ、この連載の総括ができて、お互いすっきりしましたね。いやー、よかった、よかった。じゃあ、江端さん。僕、忙しいんで、これで!」
―― 間違いない。私を一番疲れさせているのは、ヤツだ。
編集担当Mさんからのメール
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Profile
江端智一(えばた ともいち)
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
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