たまたま生まれたIoTが工事現場の電力を2割削減:NIのカスタム計測器「CompactRIO」を活用(2/2 ページ)
日本ナショナルインスツルメンツ(NI)は、カスタム計測器「CompactRIO」を活用したIoTシステムの事例を公開した。試験的に導入したトンネル工事現場では、消費電力を約2割削減することを実現している。日本NIの岡田一成氏は、「IoTは何をしたらいいか分からないという企業が多いなか、企業の課題を解決するために構築したシステムが結果的にIoTとなった」と語る。
開発期間は、3カ月
岡田氏は、今回発表したような入坑管理システムは「今まで存在しなかったわけではない。しかし、従来と違う点は安全確保と消費電力の低減を両立できたこと」とする。入坑者や工事車両の状態、電子機器の稼働状態、各種ガスの濃度の状態の組み合わせに応じ、照明と換気ファンを自動的に制御することで、無駄な電力消費を抑える。
省エネのための取り組みとして、現場で消費される電力の内訳を可視化も行っている。岡田氏は「消費電力は従来、電力会社から明細書が送られてからしか分からなかった。電力の内訳を可視化したことで、電力の消費を抑えるための努力を行う」と語る。これらにより、工事現場で消費される電力の従来比2割減を実現した。
制御端末にCompactRIOを使用するメリットも多いとする。CompactRIOは、ほこりや粉じんが多い場所でも利用可能であるとともに、「電気的な信号を出すものであれば基本的に制御できる互換性を持つ」(岡田氏)ため、開発者の負担を軽減可能。同システムの設計/実装は、テストと修正を含めて計3カ月で開発したという。
開発期間が短いことは、拡張性が高いことにもつながる。今後、トンネルが長くなったり、工事車両が変わったりしても、カスタマイズが可能とした。
「何を解決したいのがが先にあるべき」
イー・アイ・ソルは今後、今回のシステムを「TUNNEL EYE」として展開する予定。
岡田氏は、「錢高組は、今回の構想を始めるときにIoTありきで考えていなかった。しかし、解決したいことが明確にあったのだ。IoTは定義の話に走りがちな場合が多い。そうではなくて、何を解決したいのか、どのようなビジネス上の利益を出したいかといったことを決めるのが先ではないかという思いを今回の発表に込めている」と語る。
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