NXP、自動運転車向けプラットフォームを公開:自動運転車市場に攻勢をかける(2/2 ページ)
NXP Semiconductorsが米国テキサス州で開催中の開発エンジニア向けイベント「NXP FTF Technology Conference」で、同社は自動運転車向けのオープンプラットフォームを発表した。自動運転レベル2〜4の自動車を製造できるとする。
AI関連の技術については懸念も
Bonte氏は幾つかの懸念も打ち明けた。同氏は「NXPは機械学習に対応することを示唆しているが、高度なディープラーニングやAIの実現を目的にした並列GPU(Graphics Processing Unit)をベースにした、多層かつ深いニューラルネットワークアプローチに関しては、NVIDIAの方がはるかに進んでいるのは明らかだ」と述べた。要するに、Bonte氏の意見では、NXPは「自動車業界の昔ながらの信頼できるパートナーと見なすことはできるものの、イノベーションにはいくらか欠けている」ということだ。
TIRIAS Researchの主席アナリストであるJim McGregor氏は、センサーフュージョン機能がNXPのBlueboxベースのプラットフォームの重要な強みであることに同意した。この他の強みとして同氏は、他の自動車システムと容易に統合できることや、信頼性、安全性、温度、電力、自動車メーカーやサードパーティーのアプリケーションに対するオープン性といった観点から、既存の自動車プラットフォーム向けに実証済みのものとして作られていることを挙げた。
一方でMcGregor氏は、Blueboxベースのプラットフォームの弱みとして、データベースに欠けている点を挙げた。この点は、完全な自動運転車を設計する上でいまだに「最大の課題の1つ」だという。さらにMcGregor氏は「NXPは、同社がデータベースを提供できるパートナーと協業していることを示唆しているものの、私の知る限りこの情報は公表されていない」と述べた。
IHS Automotiveのインフォテインメント&ADAS部門でリサーチディレクタを務めるEgil Juliussen氏は、EE Timesに対し、「NXPのプラットフォームは、レベル2やレベル3の自動運転車を実現する、優れたADASプラットフォームのように見える」と語った。同氏は、NXPが長年にわたりADAS向けプロセッサ市場をリードしていることを踏まえると、NXPのプラットフォームは生産準備が完了した商用プラットフォームであるといえると言及した。
実際、NXPのJohnson氏はEE Timesに対して、同社が世界10大自動車メーカーのうち8社に対し3000万個以上のADAS向けプロセッサを出荷してきたと語った。Johnson氏はそれら3000万個のADASプロセッサについて、「この数には公に発表されたバージョンと、特定の自動メーカー向けにカスタマイズ設計されたバージョンの両方が含まれている」と説明した。
NVIDIAの車載向け人工知能エンジン「DRIVE PX 2」が完全にディープラーニング向けの研究開発(R&D)プラットフォームである一方、NXPはBlueboxを通じて、かつては個々のセンサーノードや処理向けに分かれていたソリューションをひとまとめにする次世代のADASプラットフォームを提供している。
「自動運転車用」とは呼べない?
だが、Juliussen氏によると、Blueboxを「自動運転車プラットフォーム」と称するのは少し無理があるかもしれないという。同氏はその理由として、「運転者のいない自動運転車について全ての知識を得られたかどうかは、まだ定かではない。ディープランニングについてもやるべきことは多く残っているし、人間の運転者がどのように運転しているのかをさらに深く理解する必要もある。われわれは、まだそこまでは至っていない」と述べた。
自動車業界が運転アルゴリズム、データ管理、3Dマッピングなどの仕組みを全て理解したころには、「NXPのBlueboxプラットフォームよりも、より高性能なプロセッサの方が必要になってくるだろう」とJuliussen氏は語った。
だがNXPは、Blueboxプラットフォームは、自動車メーカーが2020年までにレベル4の自動運転車を開発することに大いに役立つと自信を持っている。
同プラットフォームのBlueboxエンジンには、NXPのビジョンプロセッサ「S32V」と組み込みプロセッサ「LS2085A」が搭載されている。LS2085Aが演算処理を担い、S32Vはセーフティーコントローラとして設計されている。具体的にいうなら、S32Vの役割は、センサー/アクチュエーターの管理やフォルト検知だ。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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