山形大、印刷エレ技術を事業化するベンチャー設立:フューチャーインク
山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)の時任静士教授と熊木大介准教授らは、プリンテッドエレクトロニクス研究開発成果を事業展開するベンチャーを設立したと発表した。
山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)の時任静士教授と熊木大介准教授らは2016年5月、プリンテッドエレクトロニクスの研究開発成果を事業展開するベンチャー企業「フューチャーインク」を設立したと発表した。
フューチャーインクは、微細な印刷半導体回路を実現する銀ナノ粒子インクの販売や、その応用製品となるフィルム型のセンサーデバイスの開発を行う。2016年4月1日に設立され、山形大学工学部キャンパス内に所在地を置く。資本金は1000万円だ。
なお、研究開発成果は、科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム(START)の支援によって得られたものとしている。
実用に耐えられるTFT
時任氏と熊木氏らはSTARTで、微細な配線を形成する印刷装置に適用可能な銀ナノ粒子インクの開発や、大規模な印刷装置に適用できる銀ナノ粒子インクを確保できる製造法、それを用いたロールツーロール印刷プロセス開発に関する研究を進めた。
ロールツーロールとは、ロール状に巻いたフィルムを巻き送り出しながら、インクジェット印刷のような任意の加工を施し、再びロール状に巻き取るプロセスだ。
研究の結果、従来の技術では難しかった銀ナノ粒子インクの表面エネルギー制御に成功し、従来のインクジェット印刷で難しかった線幅10μmよりも微細な配線形成に成功したという。合成プロセスの最適化などにより、ラボスケール1gからロールツーロールインクジェット印刷装置などが扱える50gへのスケールアップも達成した。
また、開発した銀ナノ粒子インクを用いて作製した薄膜トランジスタ(TFT)において、センサーを十分に駆動できる1cm2/Vsのホール移動度が得られており、同技術で得られるTFTが実用に耐えることができるのを確認したとしている。
フューチャーインクは今後、開発した技術の事業化を進めて、ヘルスケアセンサーや大面積シート型センサー、電子ペーパーといった新しい市場の開拓を目指す。
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