ソフトバンクがARMを3.3兆円で買収へ:IoT市場で勝ちに行く
ソフトバンクがARMを買収することで合意したと発表した。ソフトバンク社長の孫正義氏はIoT(モノのインターネット)市場がもたらすチャンスをつかむとコメントしている。
3.3兆円で買収合意
ソフトバンクは2016年7月18日、ARMを3.3兆円(約240億ポンド)で買収することで合意したと発表した。ARMの14億1200万株を、1株当たり17ポンドで取得する。3.3兆円のうち2.3兆円は手元資金で、1兆円はローンを当てる予定で、ソフトバンクは買収資金を全額確保済みとしている。買収は2016年9月30日までに完了する予定で、ARMのブランド名およびビジネスモデルは保持される。
関連記事:“IoTの勝者 ARM”買収でソフトバンクが狙うもの
ソフトバンクの社長である孫正義氏は、ARMを買収することで「IoT(モノのインターネット)がもたらす重要なチャンスをつかむ」とコメントしている。
ARMのCEOであるSimon Segars氏は、ビジネスは順調だったので積極的に売却先を探していたわけではない、としながらも、今回の買収案を受け入れた理由について「1つ目は、ARMの株主にとって魅力的な売却であること。2つ目は、売却しなかった場合よりも大きな未来を描けること。これら2つの条件をソフトバンクが満たしていたからだ」と説明している。
“勝者”は、まだいないIoT市場
IoT市場はまだ立ち上がったばかりであり、スマートフォン市場のような“勝者”はいない。ARMのターゲット市場はモバイル機器から家電、サーバなどのエンタープライズインフラ、自動車と幅広く、いずれの分野でもデバイス、チップ出荷数ともに伸びると予測されている。ソフトバンクはARMの技術を保有することで、IoT関連で新しいサービスや市場が立ち上がった際に、いち早く参入できる体制を整えることを狙っていると考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- アバゴがブロードコムを約4.6兆円で買収、社名は「Broadcom」を継承
Avago Technologies(アバゴ・テクノロジー)が、Broadcom(ブロードコム)を、370億米ドル(約4.6兆円)で買収する。ただし買収後の社名はBroadcomが継承されるという。両社の取締役会は既に全会一致でこの買収を承認していて、取引は2016年3月末までに完了する見込み。 - 求む、「スーパーメモリ」
ARM Researchの講演内容を紹介してきたシリーズ。完結編となる今回は、ARMが「スーパーメモリ」と呼ぶ“理想的なメモリ”の仕様を紹介したい。現時点で、このスーパーメモリに最も近いメモリは、どれなのだろうか。 - ARMの10nmチップ、2016年末にもスマホに搭載か
ARMは2016年1月に、TSMCの10nm FinFETプロセス向けにSoC(System on Chip)のテストチップをテープアウトしたことを明らかにした。この10nm SoCは、2016年末までに携帯端末に搭載される予定だという。同プロセス技術は、比較的コストが高いが、低消費電力化に注力している。 - IoT機器向けエコシステムを完成――サイプレス
Cypress Semiconductorは2016年7月5日(米国時間)、BroadcomのIoT(モノのインターネット)事業の買収を完了したと発表した。これに合わせて、Cypressの日本法人である日本サイプレスは7月6日に記者説明会を行った。 - 携帯電話用半導体を巡って繰り広げられた「ババ抜き」
2000年代後半から2010年代前半にかけて、携帯電話機用半導体事業の売買が企業間で繰り返された。今、思えば本格的なスマートフォン、チップセット時代の到来を目前に控え、携帯電話機用半導体事業という「ジョーカー」を巡る「ババ抜き」だったのかもしれない――。 - スマホ市場の“敗者”に残された道
前回に続き、中国iaiwaiの格安スマートウォッチ「C600」について検証する。スマートウォッチをはじめとするウェアラブル機器やIoT(モノのインターネット)機器の市場が開拓された背景には、スマートフォン市場でどうしても勝てなかった者たちの“失地回復”に向けた努力があった。