半導体業界、次なる買収ターゲットは?:M&Aの嵐が収まる気配はなく(5/5 ページ)
半導体業界におけるM&Aの嵐は収まる気配がない。2016年も、2015年ほどの数ではないものの、大規模な買収が相次いでいる。では、現時点で買収のターゲットとなりそうな“残っている企業”はどこなのだろうか。
IDT
IDTの元CEOであるTed Tewksbury氏とStarboard Valueの18カ月に及ぶ争いは、よく知られている。
だが、Starboard Valueとの一件が起こる以前から、IDTは経営状態のよい堅調なメーカーとみられていた。IC InsightsのLineback氏は、「IDTは、1990年代から買収のターゲット企業として名前が挙がっていた」と述べる。
IDTは、タイミングデバイスなどの中核製品を軸に、ワイヤレス給電ICなどのRF製品や「RapidIO」など、順調に製品群を拡大してきた。だが、Starboard ValueがIDTの経営に関わるようになってからは、エンタープライズ向けフラッシュコントローラー事業をPMC-Sierraに、スマートメーター事業をAtmelに、データコンバーター事業をAppleに売却した。もしIDTが高速データコンバーター製品を手放さなければ、4.5G(第4.5世代移動通信)や5G(第5世代移動通信)の市場でも勝負できたかもしれない、とする専門家もいる。
Lineback氏は、IDTの存在感は、2015年12月にドイツのZMDIを3億700万米ドルで買収してから高まったと述べている。ZMDIは、車載および産業分野で強みを持っているからだ。
中国企業によるM&Aも活発に
半導体のターゲット市場の成熟に伴って、半導体業界の成長スピードが緩やかになっているのは明らかだ。それでも、自動車と産業機器、医療の分野は成長が期待されていると、PwCのMehrotra氏とFisher氏は述べる。両氏は、各半導体メーカーは、これらの分野でのシェア拡大を狙って競争を繰り広げていくだろうとみている。
鍵となるのはコストだ。両氏は「ムーアの法則の減速により、開発のコストと設計の複雑さは増すばかりだ。研究開発への投資に伴うリスクも高くなっている。これも、半導体業界でのM&Aを後押しする要因になっている。M&Aによって企業の規模が拡大すれば、より多くの利益を確保できるはずだからだ」と述べた。
加えて、中国企業によるM&Aも増えている点に注目したい。Lineback氏は「中国は、外国メーカーに頼っている半導体技術を自国内で活性化させるべく、M&Aを積極的に行っている」と説明した。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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