医療現場で多言語翻訳の臨床試験、富士通も参加:外国人患者、言葉の壁を越えて医療者と会話
情報通信研究機構(NICT)と富士通は、病院などの医療現場で多言語音声翻訳システムを活用した臨床試験を行う。病院を訪れる外国人患者数が増加する中で、言葉の壁を感じさせずに、日本人医療者と自由に会話できる環境を提供する。
ハンズフリーで適切な言語に自動で切り替え
情報通信研究機構(NICT)と富士通は、病院など実際の医療現場で多言語音声翻訳システムを活用した臨床試験を行うと発表した。病院を訪れる外国人患者数が増加する中で、言葉の壁を感じさせずに、日本人医療者と自由に会話できる環境を提供する。実施期間は2016年11月から2018年3月までの予定。
総務省委託研究開発「多言語音声翻訳技術推進コンソーシアム」の一環として、NICTと東京大学は、2015年10月より多言語翻訳の臨床試験を行ってきた。この試験には、NICTが開発した多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」技術が用いられている。この試験に、2016年11月より富士通も加わることとなった。
両者は、医療分野の専門用語をさらに強化して対応する会話の数を増やし、病院内のさまざまな利用シーンに応じられるよう、音声認識や翻訳の精度を一段と高めた多言語音声翻訳システムとする。また、富士通は富士通研究所が開発した音声解析技術や、ハンズフリー技術をVoiceTraに適用させる。周囲の騒音の大きさと人の音声の周期性の強さの相対関係に基き、騒がしい環境であっても人の音声を判別する。これにより、翻訳の開始と終了の検出ができるようになる。また、ハンズフリー技術によって端末のマイク部に話しかけるだけで話者の位置を認識することができ、日本語から多言語へ、また多言語から日本語へと、自動で切り替えることが可能となる。この技術によって、外国人患者と日本人医療者の負荷を軽減できるという。
両者は、開発した技術、システムを実際の医療現場に導入し、臨床試験を重ねることによって、多言語翻訳技術の有効性を確認していく。その上で会話データの収集や仕様の検証などを行いながら、システムを改善していく計画だ。今後は、中国語など対応する言語も広げへ行くことにしている。なお、多言語音声翻訳技術推進コンソーシアムは、2015年から5年間の予定で、多言語音声翻訳技術の研究、開発を行い、2020年までに社会実装の実現を目指すために設立された。
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