「SEMICON West 2016」、7nm世代以降のリソグラフィ技術(Samsung編):福田昭のデバイス通信(91)(2/2 ページ)
Samsung Semiconductorの講演では、「ムーアの法則」の現状認識から始まり、同社が考える微細化のロードマップが紹介された。Samsungは28nm世代と10nm世代が長く使われると予想している。さらに同社は、EUVリソグラフィが量産レベルに達するのは2018年で、7nm/5nm世代のチップ製造に導入されるとみている。
2018年には量産レベルに達するEUVリソグラフィ
EUVリソグラフィを導入することの大きな利点は、マスク数の増加を抑えることにある。ArF液浸リソグラフィの延長では、7nm世代におけるマスク数は80枚を超えてしまう。さらには微細化をあまり進められない(スケーリングファクタの大幅な低下)。
ここでEUVリソグラフィを導入すると、マスク数は10nm世代とほぼ同じ60枚にとどまるとともに、スケーリングファクタは10nm世代とあまり変わらずに済む。
EUVリソグラフィ開発の最も大きな課題は光源の高出力化、すなわちスループットの向上である。光源の出力は2014年から2016年にかけて大幅に高まってきた。Samsungは、2018年にはスループットが量産レベルに達すると見る。2018年時点で光源の出力は250Wを超え、スループットは1日当たり1500枚になると予測する。
簡単ではない、10nm世代から7nm世代への移行
ただし、EUVリソグラフィ技術が完成していたとしても、10nm世代から7nm世代への移行は簡単ではない。CPP(Contacted Poly Pitch)と金属配線ピッチ(Mxピッチ)を縮小することは、トランジスタの性能を低下させかねない。コンタクト抵抗が上昇し、金属配線の抵抗(単位長当たり)が急速に増加し、ゲートとコンタクトの容量が増大し、短チャンネル効果の抑制が必要になり、SiGe拡散層の応力による損失を補償しなければならない。
(次回に続く)
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