構造物の欠陥を検知する新技術、超音波と光を活用:表面から1cm以内の深さでも観察可能
島津製作所は2016年10月5日、超音波と光を利用して、インフラ構造物における隠れた欠陥を非破壊で検出する新技術を開発したと発表した。実証実験を重ねて、3年後をめどに事業化を目指す。
欠陥の位置や形状を容易に確認
島津製作所は2016年10月5日、同社のコア技術である画像処理と光学技術を生かし、インフラ構造物における隠れた欠陥を非破壊で検出する新技術を開発したと発表した。
インフラ構造物の検査は、磁粉探傷試験や目視検査、打音検査などが一般的である。しかし、磁粉探傷試験は部材表面の塗膜を除去しなければいけない。目視、打音検査は、判定のばらつきや見落としが問題となっていたという。
同社は開発した技術は、超音波と光を利用している。検査対象物体の表面に超音波を伝搬させ、振動で発生した表面の微小な変異を専用のレーザー照明やカメラで検知して、超音波の伝搬の様子を可視化する。この時に、検査対象物体の表面付近に亀裂や剥離、空洞などの内部欠陥が存在すると、超音波の伝搬の乱れ(不連続箇所)となって検出される仕組みだ。
従来の探傷技術は、主に対象物体の深さ方向の断面に沿って検知するのに対して、新技術では、目視や通常のカメラ撮影と同様の視野で欠陥を観察できる。そのため、欠陥の位置や形状を容易に確認できる。また、鋼材とコンクリートは異なる検査技術が適用されているが、これらを単一の検査技術でカバーできることも特長とする。
同社によると、これまで実施した基礎実験では、塗装鋼板の塗膜下の亀裂や塗膜の浮きなど、目視では確認できない欠陥を検知できている。実用化すれば、「検査前の塗膜除去が不要になり、検査工程の大幅な省力化が期待できる」と語る。
また、コンクリート表面付近にある微小なひび割れや、表面から1cm以内の深さに存在する剥離など、従来技術では検知が難しい欠陥の画像観察にも成功しているという。
同社は今後、新技術の実証実験を重ね、使いやすさの向上や性能改良を進め、3年後の事業化を目指す。交通インフラ構造物への適用に向けては、2016年9月から、京都大学大学院工学研究科の河野研究室と実証研究を開始。プラント設備への適用は、インフラ管理者や検査事業者と連携し、2016度中にフィールド実証を開始させる方針だ。
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