もう1つのAIが創り出す「空中映像」に触れる:実像として結像に成功
アスカネットは、「Aerial Imaging-空中ディスプレイ」と呼ぶ空間映像技術について、プレスカンファレンスを開催した。同社のAIプレートは、高輝度な空中映像を実像として結像できるという。
“未来”を表現する技術
アスカネットは2016年10月12日、「Aerial Imaging-空中ディスプレイ」(AI)と呼ぶ空間映像技術について、プレスカンファレンスで説明を行った。空中ディスプレイは、SF映画に登場するなど、“未来”を表現する技術として期待されている。
同社社長の福田幸雄氏によると、これまでにも海外のベンチャーなど、多くの技術者が空中ディスプレイの研究を行ってきたが、高画質な表示を行うには必ず反射物が必要である。そのため、反射物なしでの実用化は画質が低く難しいという。
ちなみに、国内では三菱電機が2016年2月に、宇都宮大学工学研究科で准教授を務める山本裕紹氏との共同開発した空中ディスプレイ技術を発表している。三菱電機が発表した技術も、再帰性反射シートを利用して空中に結像しているようだ。大型化が可能なことが特長である(関連記事:空間に映像を表示、空中ディスプレイ)。
アスカネットは、2011年に空中ディスプレイ実現のため「AI事業開発室」を発足。2016年に高画質、高輝度な空中映像を実像として結像することに成功した。必要なのは、ガラスや樹脂素材によって開発された1枚の「AIプレート」である。
「AIプレート」を用いて、空中映像を実像として結像した様子。空中に結像している画像は虫眼鏡で拡大可能な実像である。つまり、脳が作り上げる仮想の映像ではないため、目の疲労がないという。また、反射物でないことから、写真や動画で記録することが難しい (クリックで拡大)
AIプレートは、アルミを蒸着させた短冊状の鏡面ガラスを積み上げたもの2組を交差させて1枚のプレートしている。対象物から出た光が、AIプレート内で2回反射した後、反対側の空中で再び結像する仕組みとなっている。物体やディスプレイ、写真でも2D・3D関係なく実像として高画質に結像できるとする。ただし、対象物からAIプレートまでの距離と、AIプレートから空中映像までの距離は、1対1でなければいけない。
用途としては、タッチパネルの置き換えやデジタルサイネージを想定。2016年10月4〜7日に開催された「CEATEC JAPAN 2016」では、JTBグループがAIプレートにセンサーを組み合わせたデジタルサイネージを展示した。このように、実験レベルでは既に多く活用されているという(関連記事:CEATECの「IoTタウン」、初出展ばかりで面白い)
福田氏は、「AIプレートは、現在も画像品質の向上や大型化が進んでいる」と語る。課題として挙げるのは、大規模な生産ラインがなく、製造コストが高いことだ。現在、AIプレートの製造コストは50cm角で約50万円、1m角では約250万円掛かるという。そのため、ナノインプリントやフォトリソグラフィ技術による製造技術を確立するため各メーカーと開発を進めているとした。
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