データは語る、鉄道飛び込みの不気味な実態:世界を「数字」で回してみよう(35) 人身事故(7/11 ページ)
「鉄道を使った飛び込み自殺」が減らないのなら、いかにしてそれを避けるか、というのが重要になります。そこで「ビッグデータ手動解析」と「人間知能“EBATA”」を駆使して、人身事故から逃れる方法を検証してみました。ところがその先には、がく然とする結果が待っていたのです。
打つ手は「避難」しかない
今や、「うつ病」は実に自殺の3〜4割を占める原因となっており、しかも、『とにかく、理由もなく、死にたくて死にたくて、しょうがなくなる病気』である以上、「うつ病による『鉄道を使った飛び込み自殺』」を止めることは、事実上、(物理的な妨害手段、例えば、ホームゲートなどを除けば(関連記事:鉄道人身事故に打つ手なし!? 数字が語るその理由)不可能である、と、私は腹をくくりました。
ならば、私たちが次にうつ手は「避難」です。そのような『飛び込み自殺』による人身事故を予知して、そこから逃げ出せば良いのです。最近は、台風の予測進路も規模も正確に予想できるようになってきていますし、何より、
―― 最近のニュースを聞いていると、「ビッグデータ解析」とか「人工知能」とかいう、なんか〜よく知らないんですけど〜、すごいモノがあるそうじゃないですか〜(棒読み)(連載:Over the AI ――AIの向こう側に)
そんなすごいモノがあるのに、なぜ人身事故の発生予測(時間と場所と規模)程度のことができないのか、私にはよく分かりません(もう少し待っていたら登場してくるのかもしれませんが)。
しかし、この連載では、その「すごいモノ」の登場を待っているわけにはいきません。
今回、私は、内閣府さん渾身の一冊「自殺対策白書」と、国土交通省さんからご開示頂いた過去11年間分の鉄道事故データ(5万件)を使って、手作業(「Excel」)と気合だけを使って「力づくのビッグデータ解析」と「人間知能"EBATA"」による解析を行い、どのようにして『飛び込み自殺』による人身事故から避難するか、について検討してみました。
まず、検討方法ですが、「自殺」と、その中から「鉄道への飛び込み自殺」だけを取り出して、それぞれ比較する方式で検討しました。「鉄道への飛び込み自殺」の特徴や特性を理解しやすくするためです。
その後、さらに、避難すべき事故とそうでない事故を区別して、解析を進めました(後述)。
飛び込み自殺を詳しく解析してみる
まず、過去11年間のデータから、飛び込み自殺事故件数の発生月を調べてみました。
以前私は、「グーグルトレンド」を使い、毎年5月に自殺者が増える傾向を見つけて、首をかしげていました(関連記事:大いなるタブーなのか――人身事故を真面目に検証する)。この結果、江端仮説であった『決算期の年末または3月末日の自殺者の急増』説は棄却されました。
その後、読者の方から、こちらの記事をご紹介いただき、「5月という魔の季節」のことを知りました。ただ、その理由は、いまひとつよく分かっていないようです。
そして、私の今回の解析で新たに出てきた現象が「飛び込みの7月」です。冒頭で私が、ティーンエージャーたちの最も幸せな月であると分析した「7月」が、飛び込み自殺のピークの時期になるのです。
さらに不可解なのが、これが8月になると、瞬時的に改善されるというのも、全く説明がつけられません。家族に泣きついて、「どんなに荒唐無稽であってもいいから、一本、筋の通った仮説を作ってくれ」と頼みました。しかし、これまで何度も私を助けてくれた嫁さんも娘たちも、今回は全員玉砕しました。
というわけで、この「飛び込みの7月(+その反動の8月)」について、読者の皆さまと共に考えて行こうと思っております。アンケートに応じていただけることになった皆さまには、後ほどメールを差し上げますので、「われこそは」と思う方は、ぜひとも持論を展開していただきたく、よろしくお願い致します。
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