TDK、為替影響受けるもHDD堅調などで3.8%増益:連結業績予想の修正も
TDKは2016年10月31日、東京都内で2017年3月期上半期(4〜9月)における決算発表を行った。
為替の影響を受けるも……
TDKは2016年10月31日、東京都内で2017年3月期上半期(4〜9月期)の決算発表を行った。売上高は前年同期比1.4%減となる5792億円、営業利益は同2.9%減となる443億円となった。当期純利益は、同3.8%増となる327億円となっている。
同社社長の石黒成直氏は、「スマートフォン市場の成長鈍化に加えて、対ドルレートで13.5%、対ユーロレートで12.4%の円高の影響を受けた。為替変動による影響金額は、売上高で約857億円の減収、営業利益で約181億円の減益と予測している」と語る。
受動部品事業の売上高は前年同期比6.9%減となる2817億円、営業利益は同13.3%増となる367億円となっている。セラミックコンデンサーとインダクティブデバイスは、売り上げは前年同期比で減少しているが、自動車向け販売が北米、欧州、中国を中心に増加。一方、スマートフォンを中心に、ICT市場向けは減収減益となっているという。
好調が続くのは、高周波部品だ。スマートフォン向けディスクリート製品とダイバーシティーモジュールの販売増により、売り上げも利益率も前年同期比で向上した。石黒氏は、「高周波部品は、2016年度第3四半期に向けた増産による稼働益、部品搭載点数の増加も加わり、受動部品のみならず全社の収益をけん引している」と語る。
フィルム応用製品事業の売上高は前年同期比10.2%増となる1170億円、営業利益は同18.9%増の201億円となった。二次電池では、北米や中国のスマートフォン向け販売が増加。ドローンなどの新しいアプリケーションの販売も堅調に推移しているとする。
HDDヘッドを中心とした磁気応用製品事業の売上高は前年同期比1.0%増となる1663億円、営業利益は同50.0%減となる41億円となっている。SSD(Solid State Drive)への移行が進む中で、HDD向け販売が減少することは予測していたようだ。
しかし、石黒氏によると、NANDフラッシュメモリの開発が逼迫(ひっぱく)してSSDへの移行がスローダウンし、安価なHDDの需要も一定数出てきた。また、VR(仮想現実)など容量の大きいコンテンツを扱うゲーム機市場で、HDDのニーズが増えているという。「HDDの期初の売り上げは、かなり低めに想定していたが、ノンキャプティブの顧客がシェアを高めたことにより受注が増えた。売上高と営業利益が前年同期比で減少する中、当期純利益が伸びたのはHDDの影響も大きい。これは予想外だった」と語る。
200億円の下方修正
同社は今回、2017年3月期の連結業績予想の修正を行っている。期初に発表した下期の為替レートを変更し、対ドルレートを100円、対ユーロレートを110円とした。これにより、売上高は200億円下方修正となる1兆1400億円となった。営業利益、税引前利益、当期純利益は、それぞれ20億円の上方修正を行っている(詳しくは、下記図を参照)。
石黒氏は、「2016年度第4四半期のスマートフォン向け部品やHDDヘッド市場の需要が不透明なこともあり、通期で売上高200億円の下方修正を行っている。しかし、上半期の営業利益が予想を上回ったことから、営業利益自体は20億円の上方修正を行うことを決断した。下半期も為替の影響を吸収できると考えている」とした。
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