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アナログIPでSoC設計を変える、米新興企業メガチップスと協業(2/2 ページ)

アナログの専門家たちによって2015年に設立された新興企業Omni Design Technologiesは、主にSoC(System on Chip)向けにアナログIP(Intellectual Property)を開発している。その同社とメガチップスが、次世代のアナログプラットフォームの共同開発を行うという。

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なぜ、Omni Designに目を付けたのか

 なぜ、メガチップスがアナログIPのパートナーとしてOmni Designを選んだのか。Konishi氏は「Omni DesignのADCの高い性能に目を付けた。例えば、同社の14ビットのADCを用いると、毎秒1.4ギガビットのサンプリングレートを実現できる」と答えた。

 Konishi氏のチームは、有線ネットワークを使った高速データ通信に用いられる製品の開発に注力している。

 OTT(Over-The-Top)市場では、扱われるデータ(「Netflix」を介してストリーミングされる映画など)の量が増加し続けている。有線通信機器にとって、高速データを扱うことは不可欠になっているとKonishi氏は説明した。そのような用途においては、10〜14ビットの分解能を持つADCを用いれば、サンプリングレートを数ギガバイト/秒まで高められるからだ。

 Konishi氏は、メガチップスがOmni Designを選んだもう1つの理由について「Gulati氏の研究チームの実績」と答えている。Konishi氏らは、半導体集積回路技術の国際会議「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)」で発表された論文を読んで、Gulati氏らの研究成果を追っていたのだという。

 Konishi氏の見解では、アナログ技術の統合は難しさを増していて、特に複雑なハイエンドASICの設計においてその傾向が強いという。同氏は「市販のADCをASICに落とし込めば済むという話ではない。メガチップスのエンジニアリングチームは、アナログプラットフォームにOmni DesignのADCを最大限に適用できるよう、クロック、電力、ノイズレベルを最適化する計画である」と述べた。

 Omni Designによると、同社の一連の特許技術を用いると、「消費電力を大幅に削減できる上に、さまざまな回路の処理速度と精度を大きく削減できる」という。Gulati氏によれば、Omni Designの基本となる革新的な技術である「SWIFT(SWItched capacitor Fault Tolerant technology)」は、SoC設計において性能と柔軟性の向上を実現すべく開発されたものだという。SWIFTは複数の特許を取得している。

 Gulati氏によると、Omni Designは現在、この技術を用いて10ビットから14ビットまで複数のADCをシリーズとして開発しており、サンプリング速度は最大で数ギガバイト/秒に達するという。

 Omni Designによると、SWIFTは、フィルターやD-Aコンバーター(DAC)といった他のシグナルチェーン要素にも簡単に実装できるという。Gulati氏は、同技術が無線トランシーバーなどの設計を大きく変えると確信している。

 Omni Designは、SWIFTをリピーターコアにも実装した。これにより、長距離ケーブル上で、10ギガバイトのデータを極めて低い消費電力で劣化することなく伝送できるようになるという。

アナログ業界では注目を集めていたプロフェッショナルたち

 Omni Designは今のところ、半導体業界での知名度は高くはない。だが、業界の専門家らは、同社の技術とGulati氏の研究チームの優れた能力に気付いている。

 例えば、IDTの元CEOであるTed Tewksbury氏は、Omni Designに個人的に投資している。同氏はOmni Designについて、「現在、全く新しいアナログ設計技術を開発している数少ない半導体企業の1つ」と評価している。Tewksbury氏は、Omni Designの研究チームが、超低消費電力の組み込みアナログIPを開発していると、自信を持って述べた。


Omni DesignのHae-Seung Lee氏

 CEOのGulati氏以外にも、Omni Designの研究チームには、マサチューセッツ工科大学(MIT)の電気工学・コンピュータサイエンス学部の元教授で、現在は同社の主席研究者となっているHae-Seung Lee氏や、同社のバイスプレジデントで、かつて、米国カリフォルニア州サニーベールにあるSilicon Labsの開発拠点で低消費電力アナログ設計を主導していたSid Dutta氏など、そうそうたるメンバーがそろっている。さらに、Omni Designのコネクテッド・センサー部門のバイスプレジデントとして、過去6年にわたりGulati氏やLee氏と提携してきたDenis Daly氏、イリノイ大学の元教授で現在は有線通信システムの専門家であるPavan Hanumolu氏も、Omni Designに加わったという。

 MaximがCATを買収した後、Gulati氏とLee氏はMaximに3年半在籍していた。だが2014年末、彼らは同社を去り、2015年3月に、アナログIPの開発にフォーカスできるようスタートアップを立ち上げたのである。

 Omni Designは、Tewksbury氏のようなエンジェル投資家に支えられている、個人が設立した企業である。事業開始から2年もたっていないが、Gulati氏は「間もなく黒字化する見込みだ」と語る。スタートアップ、それもIPベンダーがこれほど短期間に黒字化するのは極めて珍しい。Gulati氏は、CATを設立して以来、自分たちを信じてくれている多くの顧客が、Omni Designへと流れていることを認めている。

 Gulati氏は、半導体業界において、大きな根本的な変化が訪れようとしていると話す。同氏は、今後5〜10年以内に、SoCベンダーはサードパーティーのIPブロックに、より依存するようになると予測している。「半導体エコシステムにおいて、半導体IPコアベンダーは、より大きな役割を果たすようになるだろう」(同氏)。

 メガチップスとの協業は有線通信アプリケーションに特化しているものの、Omni Designは、差異化しやすいIoT(モノのインターネット)システム向けの技術も並行して開発しているという。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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