容量400倍? Blu-rayの3.5倍速で記録可能な材料:最大400層/10TB(2/2 ページ)
産業技術総合研究所は、ダイキン工業と共同で大幅な多層化と高速な記録が可能な光ディスク向け記録材料を開発した。時間幅8ナノ秒のレーザーパルスを1回照射するだけで記録ピットを形成可能。Blu-rayディスクの記録速度の3.5倍に相当する書き込み速度を実現したという。
ナノ秒パルスを1回だけ照射
今回開発した技術は、長い時間幅のナノ秒パルスを1回だけ照射する。ピコ秒、フェムト秒レーザーパルスでは二光子吸収だけが起こり、その後に発生する熱量が限られていた。そのため、何回も繰り返し照射が必要となり、照射時間が長くなる。
一方で、ナノ秒パルスは、二光子吸収の後に一光子吸収である励起状態吸収が起こる多段階多光子吸収が生じる。励起状態吸収と熱を発生する緩和が繰り返し起こるため、実効的な二光子吸収の強度が増加し、発熱量は桁違いに増加するという。
記録材料中に再生用のレーザー光を高効率で反射するようにホログラムが形成され、多段階多光子吸収で発生する熱によってホログラムを乱すことで記録を形成する。ホログラムは、わずかに乱されただけでも反射光の強度が大きく低下するので、高コントラストの再生ができ、記録に必要な時間をさらに短縮できるのだ。
Blu-ray400枚分が1枚に
産総研などは、同原理に基づきBlu-rayに用いられる波長405nmのレーザーで、記録と再生を行った。記録材料にホログラムをあらかじめ作成しているため、再生光を照射すると強い反射光が得られる。8ナノ秒のレーザーパルス照射により記録を形成すると、反射光の強度が低下した。材料中の観測する位置を変えながら反射光を測定すると、記録が形成された場所では反射光の強度が低下し、反射光強度の差として、実用的なレベルのシグナル―ノイズ比(15dB)で記録を再生できたとする。
形成された記録ピットのサイズは深さ方向で2.7μmであり、100μm厚の記録層では20層の多層化が可能。面内方向のサイズは0.7μmで、現状はDVD程度の記録密度である。Blu-rayディスクのレベルまで記録密度を向上できれば、100μm厚の記録層で50層1.25Tバイトの記録が可能になるという。また、開発した記録材料の透過特性から800μm厚の記録層が可能と考えられ、400層/10テラバイトの保管記録向け超多層光ディスク記録が可能になると見込まれる。これは、Blu-ray400枚分が1枚になることを指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “自律発電型”のスマート材料、出力電圧は約3倍
東北大学大学院の成田史生准教授は2016年11月24日、強靭かつ軽量性を備えながら、発電性能が「世界最高レベル」とする自律発電型のスマート材料を開発したと発表した。 - カーボンナノチューブとゴムで熱界面材料を開発
日本ゼオンは2016年11月10日、スーパーグロース法を用いたカーボンナノチューブ「SGCNT」とゴムを複合したシート系の熱界面材料(TIM)の開発に成功したと発表した。 - 新規ランガサイト型単結晶振動子、東北大ら開発
東芝照明プレシジョン、東北大学及びPiezo Studioは、新規ランガサイト型単結晶を用いた振動子を開発した。同時に、新たな製造プロセスを確立し、製品コストの低減を可能とした。 - 室温で透明な強磁性体を開発、磁場で透明度制御
電磁材料研究所の小林伸聖主席研究員らによる研究グループは、透明強磁性体の開発に成功した。室温環境で大きな光透過率と強磁性を示す。しかも、新材料は磁場の大きさで透明度をコントロールできる磁気光学効果を示すことも分かった。 - 反転層型ダイヤモンドMOSFETの動作実証に成功
金沢大学理工研究域電子情報学系の松本翼助氏、徳田規夫氏らの研究グループは、「世界初」となるダイヤモンド半導体を用いた反転層チャンネルMOSFETを作製し、動作実証に成功したと発表した。 - 理研、半永久的に駆動するアクチュエータ―を開発
理化学研究所は、環境に存在する湿度の揺らぎをエネルギー源として半永久的に駆動する薄膜アクチュエーターを開発したと発表した。身の回りに存在する非常に小さな湿度の揺らぎから、運動エネルギーを取り出せることを意味する。人工筋肉などの分野に応用できる可能性があるという。